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隠れた名作の発掘が生きがい。

異常な思想が行き着く先は『セピア色の凄惨』

バッドエンドフラグマックス!


小林泰三さんのホラー小説『セピア色の凄惨』が凄惨です。タイトルからして嫌な予感しかしない!


物語は「探偵と依頼人」から始まります。この中で"ある依頼"の調査報告という形で4つの物語が報告されます。4つの報告が終わったときに"ある依頼"の真実が明らかになる、というのがこの小説の構成です。


『セピア色の凄惨』というタイトルの通り、物語の結末は第三者から見るとどれも凄惨です。しかし、当事者はその凄惨さをさほど気にしていないように見えるのが不思議で怖さを感じるところです。


自分から見れば正常だけど、他者から見れば異常な癖や思想があります。凄惨とは、その癖や思考の異常さに気付くことができないことなのかもしれないです。


セピア色の凄惨 (光文社文庫)

セピア色の凄惨 (光文社文庫)



以下は各物語の内容と感想です。

探偵と依頼人

ある探偵事務所に依頼人が訪れます。思い出から徐々に消えていく「レイ」という親友を探して欲しい、という依頼を受けて探偵は調査を始めます。


ぼんやりと覚えている人物は誰にでもいると思います。ぼんやりとしか覚えていないということは、裏を返せば掘り起こしてはいけない、という警句なのかも。

待つ女

大学祭の日、とある学生は黄色いワンピースを着た女性をナンパし、翌日デートする約束をします。翌日待ち合わせ場所に行きますが、なかなか女性は現れず…


あの日にあった女性はどんな姿をしていただろう。その姿に違和感があるのであれば、追及しない方がよいのかもしれないです。違和感を許せない悲劇。

ものぐさ

アパートで夫と娘と暮らす女性は、だんだんとものぐさな性格になっていきます。ゴミを捨てるのも面倒なので、やがて部屋はゴミで溢れていき…


「面倒くさい」と「大切なもの」のバランスが崩れる話です。もしも「面倒くさい」が「大切なもの」よりも優ったのであれば、そこには凄惨さしか残らない。

安心

心配性の女性が、ものが壊れないかを確認する話です。携帯電話が水に浸かっても壊れないかの確認から始まり…


確認は大事だと思いますが、やりすぎです。物事には限度あると思いますが、その限度を超えてきます。眉間にシワが寄りっぱなしの話でした。

英雄

だんじりの文化が残る街。とある青年はだんじりをリードする大工方を頼まれます。しかし、それはとても危険で責任重大なことで…


だんじりも節度を守れば楽しいと思いますが、やりすぎです。信仰を持つとその信仰こそが正義と思ってしまう、そんな話でした。

【Java】アノテーションを利用してフィールドの項目長をチェックする

JavaでBeanやDTOのフィールドの項目長をチェックするサンプルプログラムを書きました。フィールドに項目長用のアノテーションを追加し、そのアノテーションとフィールドの項目長とを比較して、項目長がオーバーしていたらログ出力するコードです。

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心理学入門漫画『サイコろまんちか』で日常生活を面白く

心理学を生活の中で応用している人、かっこいい!


心理学を使って高校生活をエンジョイしようとする漫画『サイコろまんちか』が面白いです。ヒロインの「伊東」が幼なじみの「阿部」を誘って心理学研究部を立ち上げてなんやかんやする青春コメディです。


基本的には1話完結です。各話のタイトルは心理学用語になっていて、それをテーマにした話が展開されます。例えば「確証バイアス」や「ツァイガルニク効果」がテーマになったりします。その効果を利用して伊東は阿部を射止めようとします。まぁ、なかなか成就しないんですが、その不憫さが逆に良いですよ!


ギャグマンガとしても面白いのですが、心理学の入門書としてもかなり有用なのではないかと思います。「この心理学を応用したらこんな結末になる」を見ることができるので理解も早いです。


日常生活で使えそうな心理学がまとまっているので、手元に常に置いておきたい漫画ですね。



以下はタイトル(心理学用語)とその解説メモです。いずれどこかで応用したい!※厳密な定義ではない注意

  • 第1巻
    • CASE001 ハロー効果
    • CASE002 プライミング効果
    • CASE003 同調
    • CASE004 サイコドラマ
    • CASE005 空白補完効果
    • CASE006 メラビアンの法則
    • CASE007 確証バイアス
    • CASE008 正の転移
    • CASE009 自己不一致
    • CASE010 ツァイガルニク効果
    • CASE000 傍観者効果
    • EXTRA CASE アンカリング効果
  • 第2巻
  • 第3巻
    • CASE021 顔面フィードバック仮説
    • CASE022 ジンクピリチオン効果
    • CASE023 現状維持バイアス
    • CASE024 学習性無力感
    • CASE025 セルフ・ハンディキャッピング
    • CASE026 レスポンデント条件付け
    • CASE027 サンクコスト効果
    • CASE028 基本的帰属の錯誤
    • CASE029 ハルバースタットの実験
    • CASE030 単純接触効果
    • EXTRA CASE ブロークン・ウィンドウ理論
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思い込みが激しすぎる依頼人達に耐えられる?『安楽探偵』

いくら日本語で意思疎通は取れるといっても、個人の持っている思考は様々なので、話が通じなかったりもしますよね。


中でも思い込みが激しい人とのコミュニケーションは厄介かと思います。その人から必要な情報を引き出したり、説得させたりするのは結構なスキルが必要です。


思い込みが激しい依頼人達を相手にする、そんな探偵を描いた小説が小林泰三さんの『安楽探偵』です。ミステリーの安楽椅子探偵(部屋から一歩も出ずに事件を解決する系)の分野に入る作品です。


基本的には、探偵の事務所に依頼人が訪ねてきて、その依頼人達の話を聞き、依頼を解決するという流れです。一話ごと完結で、全部で六話あります。


論理的で非の打ち所のない探偵と、一般的な論理が通じないような依頼人。そんな両者が出会って会話したならば、面白いことになるの必至ですよ。


安楽探偵 (光文社文庫)

安楽探偵 (光文社文庫)

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人工生命体がより人間らしくなる『彼女は一人で歩くのか?』

歩くのでしょう!


人間と人工生命体との関係に素敵なものを感じる小説が森博嗣さんの『彼女は一人で歩くのか? (Does She Walk Alone?)』です。Wシリーズの第1作目です。


人工細胞で作られた生命体「ウォーカロン(walk-alone)」。人間にそっくりで外見から見分けるのは難しい、そんな生命体と人間が共存している近未来の世界が舞台です。


人間とウォーカロンを識別する方法を研究していた「ハギリ」は、ある時何者かに命を狙われます。そんなハギリを保護するために「ウグイ」が現れて…が物語の導入です。


この小説で描かれる未来って、実現可能性の大きい未来のように感じるんですよね。長寿化と人工生命体、この2つが社会に浸透したのであれば、人間はどういった生き方を選択していけば良いのだろうか。


長寿化 = 人口減少

研究によって人間の寿命が大きく伸びます。寿命が伸びるということは子孫を残す必要も無くなってくるので少子化、人口減少に繋がります。


自分の好きなことに費やせる時間が増える一方で、人口は緩やかに減少していく。そんな現実をこの小説では描いているのですが、不思議とその現実が美しく感じるんですよね(森さんマジック)。

人工生命体はより人間らしく

人工知能は生活に普及してきているし、そう遠くない未来に一人で歩くアンドロイドが登場すると思います。しばらくは人間とアンドロイドの見分けがつくと思いますが、いずれはそれも解消されて人の五感だけでは区別できなくなります。


人間と人工生命体との区別ができなくなった時、両者の関係はどうなっていくのだろうか?その一つの解をこの小説で描いています。

よい終末を!

現代を生きている人の役目は、きっと人間よりも完全性を持った存在を創ることにあると思います。そして、その存在を創ったのであば、人類は衰退を余儀なくされます。それは摂理のように思います。


『彼女は一人で歩くのか?』は人類と新世代の入れ替わりの分岐点を見ているような物語でした。人類の終末につながるような物語なのですが、それは決して嫌ではなく、むしろ素敵に感じるんですよね(森さんマジック)。


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minor.hatenablog.com

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