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隠れた名作の発掘が生きがい。

人の思い込みって怖いよね『惨劇アルバム』

とある家族(辺野古家)に起こった惨劇を描いたホラー小説が小林泰三さんの『惨劇アルバム』です。父、母、娘、息子、祖父の5人を主役にした5編の短編に序章・終章が加わった構成です。


「人の思い込みの怖さ」というのが短編で共通したテーマとしてあると感じました。例えば母が主役の物語では「少しでもタバコの煙を吸ったら汚染される」という思い込みで理解のしがたい行動をしたりします。


思い込みの強さに起因する行動は、第三者から見れば狂気に感じることもある。『惨劇アルバム』はそんな怖さを堪能できる小説でした。


惨劇アルバム (光文社文庫)

惨劇アルバム (光文社文庫)


各章で主役となる辺野古家の人は次のようになります。

主役
序章 娘 (美咲)
幸福の眺望 娘 (美咲)
清浄な心象 母 (七奈)
公平な情景 息子 (福)
正義の場面 祖父
救出の幻影 父 (迩)
終章 娘 (美咲)
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記憶を飛ばす勇気ある?『アイリウム』

記憶を飛ばす、そんな状態を意図的に作り出せたら…


飲んでから24時間分の記憶をなくす薬「アイリウム」。そんな薬をテーマにした漫画が小出もと貴さんの『アイリウム』です。1巻完結、全7話のショートストーリーです。


記憶を無くすなんて怖くてできないですよね。。けれども、これから迎えることが嫌な記憶になると分かっていたのであれば、「アイリウム」に頼りたくなる気持ちは分からなくもないです。


例えば、戦場の兵士であればこれから赴く戦場の怖さを払拭するためにアイリウムを服用します。執刀医は術死に立ち会う記憶を無くすために服用します。嫌なことがあらかじめ分かっているのであれば需要はありそうです。


用法用量を守って正しく使えば有用だと思いますが、まぁ人間が使うので、ときには正しく使われないです。『アイリウム』はそんな状況が生み出すドラマが楽しめる漫画です。


アイリウム (モーニングコミックス)

アイリウム (モーニングコミックス)


File001 映画監督志望

映画監督志望の峰雄(27歳)は、自主制作の作品を作り続けていたが大きな賞を獲れずにいた。焦燥と憔悴の中、アイリウムという薬の存在を知り…


夢を追いかけている自分の状況と、安定した職業についている同級生達とを比較すると、やっぱり不安になりますよね。そんな不安な日々も、後から振り返ればきっと価値のあるモノのはず。消すなんてもったいない。

File002 兵士

兵士の最盛期は戦場に入ってから一ヵ月(と言われている)。アイリウムを利用するとその一ヵ月という状態をずっと維持できます。アイリウムによって最盛の状態を維持し続ける兵士の話です。


戦場の兵士というとPTSD心的外傷後ストレス障害)の問題が思い浮かびます。アイリウムはその問題に対して有効のよう思いますが、人間性のような何か大切なものを犠牲にしているのは変わりないわけで…

File003 ママ友

主婦4人のママ友会で、アイリウムを全員で飲んだ後に自分の秘密を打ち明ける「告白会」を行うようになります。ある日、他のママ達が何を行っているかを知りたくなり…


他人の秘密を安易に知ろうとしてはいけない、そんな警句が得られる話です。他人の秘密や劣等感を知るということは、その重さを自分も受け入れるということなのかもしれない。

File004 ロックンローラー

ロックンローラーの父と娘の話です。父はすでに離婚しており、娘とは定期的に会う関係でしたが、ある日、娘から「今日で会うのをやめたい」と言われます。後悔しないために、父と娘の最後の夜はアイリウムを服用します…


アイリウムを服用した後に父親から離婚の真相を語られるのですが、この内容がとてもせつないです。記憶の連続性には替えようのない価値がある、そんな大切なことを認識する名作です。

File005 ホスト

ホストクラブのオーナーにたびたびアイリウムを盛られるホストの話です。記憶をなくしている間にオーナーからの借金がなぜか増えています。借金をなんとかするために、同じく借金で苦しんでいるホストと協力して…


アイリウムを飲んでいる間に交わした契約は無効にするという法整備がないと社会は大変なことになりそうです。契約が有効なのであればやりたい放題です。アイリウムが悪用される裏の世界を描いた話でした。

File006 女医

インオペ(手術不能)症例のオペを担当する女医の話です。術死に立ち会うという嫌な記憶を残さないため、他の医者はアイリウムを服用しますが、女医はプロとしての責任から薬を服用せず…


記憶を無くすということは得られたはずの経験値も捨てるということです。その経験が次の成功に寄与する可能性があるのであれば、逃げることをしない。そんな信念を感じる話でした。

File007 研究者

アイリウムを作った仁科教授とその教授に協力してきた男性(真田)の話です。高齢となった教授のもとに真田が訪れます。しかし、真田には教授から「3年教授に尽くせば常勤の准教授にしてくれる」という約束を反故された過去があり…


研究には、例えば「自分の作った薬で人を救いたい」といったような理想があります。理想が実現したのであれば、それはとても嬉しいことでもありますが、その実感を確かめる手段を間違えてはいけないです。

異常な思想が行き着く先は『セピア色の凄惨』

バッドエンドフラグマックス!


小林泰三さんのホラー小説『セピア色の凄惨』が凄惨です。タイトルからして嫌な予感しかしない!


物語は「探偵と依頼人」から始まります。この中で"ある依頼"の調査報告という形で4つの物語が報告されます。4つの報告が終わったときに"ある依頼"の真実が明らかになる、というのがこの小説の構成です。


『セピア色の凄惨』というタイトルの通り、物語の結末は第三者から見るとどれも凄惨です。しかし、当事者はその凄惨さをさほど気にしていないように見えるのが不思議で怖さを感じるところです。


自分から見れば正常だけど、他者から見れば異常な癖や思想があります。凄惨とは、その癖や思考の異常さに気付くことができないことなのかもしれないです。


セピア色の凄惨 (光文社文庫)

セピア色の凄惨 (光文社文庫)



以下は各物語の内容と感想です。

探偵と依頼人

ある探偵事務所に依頼人が訪れます。思い出から徐々に消えていく「レイ」という親友を探して欲しい、という依頼を受けて探偵は調査を始めます。


ぼんやりと覚えている人物は誰にでもいると思います。ぼんやりとしか覚えていないということは、裏を返せば掘り起こしてはいけない、という警句なのかも。

待つ女

大学祭の日、とある学生は黄色いワンピースを着た女性をナンパし、翌日デートする約束をします。翌日待ち合わせ場所に行きますが、なかなか女性は現れず…


あの日にあった女性はどんな姿をしていただろう。その姿に違和感があるのであれば、追及しない方がよいのかもしれないです。違和感を許せない悲劇。

ものぐさ

アパートで夫と娘と暮らす女性は、だんだんとものぐさな性格になっていきます。ゴミを捨てるのも面倒なので、やがて部屋はゴミで溢れていき…


「面倒くさい」と「大切なもの」のバランスが崩れる話です。もしも「面倒くさい」が「大切なもの」よりも優ったのであれば、そこには凄惨さしか残らない。

安心

心配性の女性が、ものが壊れないかを確認する話です。携帯電話が水に浸かっても壊れないかの確認から始まり…


確認は大事だと思いますが、やりすぎです。物事には限度あると思いますが、その限度を超えてきます。眉間にシワが寄りっぱなしの話でした。

英雄

だんじりの文化が残る街。とある青年はだんじりをリードする大工方を頼まれます。しかし、それはとても危険で責任重大なことで…


だんじりも節度を守れば楽しいと思いますが、やりすぎです。信仰を持つとその信仰こそが正義と思ってしまう、そんな話でした。

【Java】アノテーションを利用してフィールドの項目長をチェックする

JavaでBeanやDTOのフィールドの項目長をチェックするサンプルプログラムを書きました。フィールドに項目長用のアノテーションを追加し、そのアノテーションとフィールドの項目長とを比較して、項目長がオーバーしていたらログ出力するコードです。

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心理学入門漫画『サイコろまんちか』で日常生活を面白く

心理学を生活の中で応用している人、かっこいい!


心理学を使って高校生活をエンジョイしようとする漫画『サイコろまんちか』が面白いです。ヒロインの「伊東」が幼なじみの「阿部」を誘って心理学研究部を立ち上げてなんやかんやする青春コメディです。


基本的には1話完結です。各話のタイトルは心理学用語になっていて、それをテーマにした話が展開されます。例えば「確証バイアス」や「ツァイガルニク効果」がテーマになったりします。その効果を利用して伊東は阿部を射止めようとします。まぁ、なかなか成就しないんですが、その不憫さが逆に良いですよ!


ギャグマンガとしても面白いのですが、心理学の入門書としてもかなり有用なのではないかと思います。「この心理学を応用したらこんな結末になる」を見ることができるので理解も早いです。


日常生活で使えそうな心理学がまとまっているので、手元に常に置いておきたい漫画ですね。



以下はタイトル(心理学用語)とその解説メモです。いずれどこかで応用したい!※厳密な定義ではない注意

  • 第1巻
    • CASE001 ハロー効果
    • CASE002 プライミング効果
    • CASE003 同調
    • CASE004 サイコドラマ
    • CASE005 空白補完効果
    • CASE006 メラビアンの法則
    • CASE007 確証バイアス
    • CASE008 正の転移
    • CASE009 自己不一致
    • CASE010 ツァイガルニク効果
    • CASE000 傍観者効果
    • EXTRA CASE アンカリング効果
  • 第2巻
  • 第3巻
    • CASE021 顔面フィードバック仮説
    • CASE022 ジンクピリチオン効果
    • CASE023 現状維持バイアス
    • CASE024 学習性無力感
    • CASE025 セルフ・ハンディキャッピング
    • CASE026 レスポンデント条件付け
    • CASE027 サンクコスト効果
    • CASE028 基本的帰属の錯誤
    • CASE029 ハルバースタットの実験
    • CASE030 単純接触効果
    • EXTRA CASE ブロークン・ウィンドウ理論
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