マイナー・マイナー

隠れた名作の発掘が生きがい。

『銀河は彼女ほどに』滅亡系女子と一緒に過ごす非日常

胸が苦しくなると隕石を降らせる。


そんな性質を持つ彼女を描いた漫画が高木ユーナさんの『銀河は彼女ほどに』です。彼女の機嫌を損ねないようにしないと人類が滅亡してしまう物語です。2巻完結。


主人公の「人(じん)」は同じクラスの「大石阿智(おおいしあち)」とバスで乗り合わせます。人は阿智の襟からハート型の何かが出ているのを見つけたので、気になってそれを触ってみたら首を飛ばされます。そんな衝撃的な展開で物語は始まります。


首は何かすごい力が働いて元に戻るんですけど、そのあと阿智に話を聞いたら、どうやら阿智は地球を滅亡させに来た地球外生命体ということが分かります。地球を滅亡させないために人が頑張る…というのがおおまかなストーリーです。


恋愛と人類滅亡を天秤にかけたとき、どちらを選択するだろうか。人はどちらも選択できなくて妥協点をなんとか見つけ出そうと奔走し、そして感動の結末を迎えます。


銀河は彼女ほどに(1) (マンガボックスコミックス)

銀河は彼女ほどに(1) (マンガボックスコミックス)



大石阿智の(不思議な)言動を人がなんとか受け止めようとするコミュニケーションが面白いです。例えば、阿智が地球を滅亡させると人に伝えたときのこの受け止め方。

オレの好きな子が突然「地球はキレイだけど…滅亡します」とか言いはじめたので オレは小一の時の道徳の授業を思い出していた


高木ユーナさんのこのセンスがめっちゃ良いですよねー。うまく言葉にできないですが、、感じたことを素直に描写するセンス、とでもいうんでしょうか。高木ユーナイズムを一度体感するとファンになる人は多いんじゃないかな?


また、感情が変化していく様子も読みどころかと思います。コミュニケーションには言葉を受け止める責任みたいなものがあると思うんですけど、物語の最初の方では、人は最初その責任を受け流すような描写です。しかし、物語が進むにつれてその責任を受け止めようと変化していき、その過程の描き方がうまいなぁと感じるところです。


隕石が落ち、たくさんの死傷者が出て、人に恐怖が押し寄せる。逃げたいという感情にとらわれながらも、阿智への想いが強くなっていき、だんだんと阿智と正面から向き合うようになる…この展開が良いですよ!


恋愛と滅亡の板挟みになりながら、だんだんと責任と向き合った行動をするように変化する。『銀河は彼女ほどに』はそんな成長を楽しめる漫画でした。


滅亡系女子関連:
minor.hatenablog.com

『少女終末旅行』と『BLAME!』の共通点

荒廃した階層都市を2人の少女が旅をする…


つくみずさんの漫画『少女終末旅行』が熱いです!文明が崩壊した世界を少女達が旅をする。そして、旅中で人類が存在した形跡を見つけては感傷に浸る。そんな展開がたまらないです。


そして、『少女終末旅行』を読むと弐瓶勉さんの漫画『BLAME!』が頭をよぎるんですよね。巨大な階層都市の中で主人公がある遺伝子を探す、という漫画なのですが、どことなく共通点があるように感じます。


階層都市、終末観、廃墟…そんな普遍的な要素が『少女終末旅行』と『BLAME!』に共通してありそうです。2つの漫画に共通にあるような要素を調べてまとめました。(ネタバレ注意)

旅路は2人

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左:『少女終末旅行』のチト&ユーリ
右:『BLAME!』の霧亥&シボ


主人公が1人だと何にも会話なく進むだろうし、3人だとわちゃわちゃして終末の孤独感が演出できない。そんなわけで、2人の旅路というのが漫画にほどよく映えるんじゃないかなと思います。

階層都市

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上:『少女終末旅行』の 01話
下:『BLAME!』の LOG.1


都市の上に都市…そんな世界観が2つの漫画にあります。人類の発展によって階層都市が作られますが、人類の衰退、もしくは増築を止められないという理由によって、閑散とした光景となります。

固形食料

野菜や家畜を育てる環境が少なくなってくるのであれば、おのずと保存がきく携帯食料がたくさん作られそうです。『少女終末旅行』では主食として、『BLAME!』ではシャキサクとして登場します。

両方の漫画に魚が登場します。人間はかろうじて生きているけれど、魚という原始的な生物もかろうじて生きている、そんな描写に生命の力強さを感じます。

紙の本は寿命が長く記録と再生が容易なので、終末でも残っていそうですよね。『BLAME!』では本を読んで「大地って何だ」と呟きます。かつて記録した情報が遠い未来のどこかで再生される、そんな描写が素敵すぎます。


minor.hatenablog.com

建設機械

巨大な都市階層を人の手で作り上げるのは困難のため、都市の建物を建設・保守するための自律機械が登場しそうです。人の利便性のために作られた機械が人がいなくなっても稼働し続けるという世界観、良いですよね。

管理AI

技術が発展すれば人間の生活を支援・管理する人工知能(AI)も登場しそうです。おそらくは高度なAIとなるため、自我を持ったような振る舞いをするんじゃないかな。

まとめ

階層都市が登場する漫画『少女終末旅行』と『BLAME!』の共通点を調べました。共通点には普遍的な何かがあって、その何かに素敵さを感じます。『少女終末旅行』や『BLAME!』みたいな漫画、もっと出て欲しいなぁ…


少女終末旅行 1巻 (バンチコミックス)

少女終末旅行 1巻 (バンチコミックス)

『機械仕掛けのメルディーナ』巨大な機械と北欧美女という至高の組み合わせ

機械大好き。人間嫌い。


ただし美少女!が登場する漫画が宮ちひろさんの『機械仕掛けのメルディーナ』です。スチームパンク感の漂うSFです。2巻完結。


舞台は機械技術が発展したロシアの風土を感じる街。そこに住む「メルディーナ」は機械の処分場で大きな機械を見つけます。その機械を修理し「マキーナ」という名前を付けて一緒に暮らし始めます。


物語は3人の登場人物を中心に進みます。


メルディーナ
本編の主人公(1巻の表紙の女性)。機械工学博士の娘。両親を事故で亡くしたことによって機械にしか心を開けなくなってしまう。


アリサ
メルディーナと友達になりたい少女。メルディーナに機械のぬいぐるみを修理してもらったりなど、お礼をしたいけれど門前払いされる。


ルカ
「んふー」の女性。街の巡査。国家の暗部のような組織と関わりがある。メルディーナの秘密を知っており、それ絡みで大変なことをしようとする。


アリサがメルディーナに歩み寄っては拒絶され…の繰り返しにもどかしさを感じる物語です。ですが、そのもどかしさを耐えた先には、素敵な何かがありそうなわけで。




人間の言葉を理解し、自律走行する機械。そういう機械も近々登場すると思いますが、そこにロシアンテイストが加わるとスチームパンク感が出てきます。そんなロシアのような風土でしか生まれないような機械っていいですよね。


ロシアといえば列車(シベリア鉄道)や人工衛星スプートニク)が思い浮かびます。それらに連想される「頑強さ」を持ったような機械には何か惹かれるものがあります。そして、そんな「頑強さ」を持った機械と北欧の美少女が出会ったのであれば、もうそれだけで絵になりますよ。


物語は、機械と人との関わりが深くなった社会主義国家が背景にあり、その国家の行く先を見届けるような内容でした。最後の方で「機械仕掛け」のベールが明かされるんですけれども、これが胸熱の展開でした。究極の社会主義を始めるのも終えるのも、結局は人間の感情なのだろうなぁ…

SaaSアプリを構築する前に『The Twelve-Factor App』を知っておけば良かった…

クラウドエンジニアを目指すのであれば『The Twelve-Factor App (12 Factor App)』を知っておかなければ恥をかくんじゃないかな…


『The Twelve-Factor App』はPaaSで有名な企業「Heroku」の人が書いたWebアプリのビルド&デプロイの方法論です。SaaSアプリケーション開発のための原則が12個にまとまっています。内容は下記リンクに詳細に書いてあります。


12factor.net


少し前に『The Twelve-Factor App』を知らずにクラウドサービスを利用したシステムの新規構築を行ったのですが、構築前にこれを知っておけばもっと保守性の高いシステムになったんじゃないかと思います。反省点がいっぱいですよ。


同じ失敗をしないために、ここに『The Twelve-Factor App』の要点と所感をメモします。

  • I. コードベース
  • II. 依存関係
  • III. 設定
  • IV. バックエンドサービス
  • V. ビルド、リリース、実行
  • VI. プロセス
  • VII. ポートバインディング
  • VIII. 並行性
  • IX. 廃棄容易性
  • X. 開発/本番一致
  • XI. ログ
  • XII. 管理プロセス
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『黒街』最終回に煮え切らなさを感じるブラック(バイト)ユーモア

ゾンビ、怪物、邪神…そんな怪異が徐々に街にあふれてくる漫画が小池ノクトさんの漫画『黒街』です。ブラック(バイト)ユーモアあふれる話が面白いです。3巻完結。


主人公は高校生の「幸一」。父と二人で「黒街」で暮らしており、ある理由により学校をサボっています。そんな彼の元にさまざまな怪異が起こり始めます。


物語は父の再就職先の話から始まります。毎日くたびれた様子で帰ってくる父の姿を見て「職場はブラックなのかな?」と思っていたら本当にブラックだったという話です。その後、転々と職場を変えるのですが、やっぱりブラックという展開が続きます。


途中から学校の話も混ざり始めます。邪神部(という部活)の「小早川英子」と出会い、こんな状況はさすがにおかしいということで、怪異の真相を明らかにしようと行動します。


黒街 2 (少年チャンピオンコミックス・タップ!)

黒街 2 (少年チャンピオンコミックス・タップ!)

1巻の表紙は怖いので2巻を載せました


つくづく思うんですけど、ギャグとホラーは紙一重なんですよね。『黒街』はギャグとホラーを合わせ持っているのが特徴的なのですが、最初はギャグだと感じた話もよくよく考えると怖いぜこれ、なこともあります。ギャグとホラーが重ね合わさった奇妙な世界観が素敵です。


また、街の住人がだんだんと壊れていく、小さな怪異がだんだんと大きくなっていくという展開も面白い要素のひとつです。今日起こった怪異が翌日には普通に扱われる…そんなことを繰り返していたら大変なことになるの必至です。伊藤潤二さんの漫画『うずまき』に似ているように思いました。


そして、物語の最後の方で明かされる真相に衝撃を受け、終わり方に煮え切らなさを感じます。怪異の真相が(うすうす)分かっていたとしても受け入れられない感情というのがありますよね。後味が良いやら悪いやらな最終回でした。