自分が現実だと思っている世界は本当の世界なのだろうか。本当の世界は別にあって、幻想を本当の世界だと思っているだけではないだろうか。
幻想と本当の世界が入り乱れる、そんな物語が詰め込まれた短編小説が小林泰三先生の『目を擦る女』です。全7編で構成されています。2017年10月31日に電子書籍で販売開始しました!
紙媒体の方では『目を擦る女』の後にそれを再編した『見晴らしのいい密室』という短編小説が出版されています。『見晴らしのいい密室』には『目を擦る女』の下記4編が収録されています。
- 目を擦る女
- 超限探偵Σ
- 未公開実験
- 予め決定されている明日
この4編については、
説得力のある奇妙な論理展開が素敵『見晴らしのいい密室』 - マイナー・マイナー
でレビューしているので割愛します。ここでは『目を擦る女』でしか読めない残りの3編の感想を書きました。
- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/10/31
- メディア: Kindle版
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脳喰い
宇宙空間に直径10kmの球状の物体が現れます。その物体が降り立った宇宙ステーションに向かうと、そこには人間の死体が転がっていた。残されていた記録を観ると、人から脳だけを取り出して食べる生物「脳喰い」が映っており…
脳は目に映る世界を現実と実感させることのできる重要な器官です。そんな重要な器官が意識のあるまま奪われたのであれば、奪われた人の現実は大変なことになりそうです。
空からの風が止む時
空から風が落ちてくる世界の住人達の物語です。その世界では徐々に重力が衰退する現象が起こっており、近い未来に重力がなくなることが予想されていた。重力がなくなる日に備え、住人達は避難の準備に取り掛かります…
なぜ風は空から落ちてくるのか…その真実が明らかになったとき、熱いものを感じると思います。自分で観測できる範囲が世界の全てだとついつい思いがちですが、実は世界は想像以上に広大だったりします。
刻印
テレビをつけると「日本にエイリアンが現れたらしい」という情報が流れてきます。エイリアンを警戒するため、家の戸締りをしようと家を見て回ると、トイレで等身大の蚊を発見します…
人は牛を食べる、蚊は人の血を吸う…異生物とのコミュニケーションで明らかになる真実があります。その真実が人類の真理(神話)に接続する展開がすごく面白い物語でした。
小林泰三先生の小説まとめ:
minor.hatenablog.com