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【投資の基本】単利と複利の違いをしっかりとまとめました


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単利、複利は投資の利回りの種類です。単利は投資額にのみ利子がつき、複利は投資額に対して得られた利子を再投資することにより、次に受け取る利子を増やします。投資の勉強を本格的に行おうと思い、まずは単利、複利の違いをしっかりとまとめました。


単利と複利の増え具合


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今、100万円持っているとします。この100万円を年利10%で運用することを考えます。このとき、単利、複利のそれぞれでの資産の増え具合は上図のようになります。


単利は常に100万円に対して10%の利益が得られます。 それに対して複利は、例えば2年目の利益は1年目の総資産である110万円に対して得られます。 利益を運用に組み入れるか組み入れないかで、10年目には約59万円の差がつきます。

単利の原理


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時刻t_0において投資額S_0を投資します。 この投資は時刻t_nまでに単利での利子がn回得られるとします。 また、簡単のため、利子が得られる間隔は均等でTとし、単位時間あたりの利子率は時間に依存せず一定でRとします。 このとき、t_nにおける回収額S_nとS_0との関係は次式で表されます。


S_n=(1+nTR)S_0 (A)


導出は次の通りです。 まず、t_0において、S_0を何かに投資したとします(1)。 この投資はt_1においてにS_0対する利子I_1を得ます(2)。 同様に、t_2においてS_0に対する利子I_2(3)、t_nにおいてS_0に対する利子I_nを得ます(4)。 利子率が均等であることを考慮すると、I_1、I_2、...、I_nはすべて等しいため、それらの関係は、


I_1=TRS_0(=I_1=I_n)


となります。 そして、t_nにおけるS_nは、S_0とI_1I_2、...、I_nとの加算です(5)。 上式を考慮すると、式(A)は以下のように導出されます。


S_n=S_0+S_1+S_2+...+S_n\,\cdots\\\hspace{9pt}=S_0+TRS_0+TRS_0+...+TRS_0\,\cdots\\\hspace{9pt}=(1+nTR)S_0


複利の原理


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単利と同様に、時刻t_0において投資額S_0を投資します。 ただし、この投資は時刻t_nまでに複利での利子がn回得られるとします。 また、T、Rはそれぞれ利子が得られる間隔、単位時間あたりの利子率を表します。 このとき、t_nにおける回収額S_nとS_0との関係は以下の式で表されます。


S_n=(1+TR)^nS_0 (B)


導出は次の通りです。 まず、時刻t_0において、投資額S_0を何かに投資したとします(1)。 この投資はt_1においてS_0に対する利子I_1を得ますが(2)、得られたI_1はすぐに再投資します(3)。t_2においてはS_0+I_1に対する利子を得て(4)、すぐに再投資します(5)。 つまり、t_1、t_2時点におけるS_0+I_1、S_0+I_2は、


S_0+I_1=(1+TR)S_0
S_0+I_2=(1+TR)(S_0+I_1)\,\cdots\\\hspace{27pt}=(1+nTR)S_0=(1+TR)^2S_0


となります。 同様の手順で、t_nにおけるS_0とI_n(6)との和は(1+TR)^nS_0となり、この式はS_n(7)に相当します。  


単利と複利の比較

t_nにおける単利、複利の回収額S_n=(1+nTR)S_0、S_n=(1+TR)^nS_0の利子率が関わる項、


(1+nTR)
(1+TR)^n


を比較します。まず、nを変化させたときのS_n=(1+nTR)、S_n=(1+TR)^nを下図に示します。ただし、T=1とし、R=0.01、0.03を想定しました。 青、赤はそれぞれ単利、複利であり、破線、実線はそれぞれR=0.01、0.03を示しています。


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nが大きくなるにつれ、単利と複利との乖離が明確に表れているように思えます。 また、n=30において、R=0.01のとき、S_n=(1+TR)^nはS_n=(1+nTR)の約1.037倍となり、R=0.03のときは約1.278倍と計算されます。 つまり、Rによって単利と複利との乖離度合が決定されると考えられます。 横軸にRをとり、縦軸に(1+TR)^n/(1+nTR)をとった結果を下図に示します。


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R=0.03において、n=20で運用すると複利は単利の約27倍となり、n=30で運用すると約262倍となります.


複利の限界

複利において、再投資の間隔と複利の最終的な利子率との関係を考えます。 つまり、例えば、運用期間を10年と設定したとき、利子を受け取って再投資する間隔が1年と1ヵ月ではどのような違いがでるか、といった問題を考えます。


再投資の間隔は(t_n-t_0)/nとも書けるため、複利の利子率に関わる項(1+TR)^nは(1+(t_n-t_0)R/n)^nと表されます。 このnを大きくしていくと、ネイピアの定義により、


 \displaystyle \lim_{n \to \infty}(1+(t_n-t_0)R/n)^n=\mathrm{e}^{(t_n-t_0)R}


となります。つまり、どんなに再投資間隔を短くしていっても最終的な利子率は\mathrm{e}^{(t_n-t_0)R}以上にはならないことを表しています。 例として、(t_n-t_0)/n、R=0.01としたときのnに対する利子を以下に示します。 青の破線は最終的な利子率を示しています。


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まとめ

単利と複利を比較し、利子率と再投資間隔が投資に与える効果についてまとめました。利子率が増加するに従って、複利の期待効果は単利よりも大きくなります。また、再投資間隔が短くなるに従って複利の効果は大きくなりますが、利子率の伸び率は少なくなっていきます。


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