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隠れた名作の発掘が生きがい。

『マリアビートル』ついていないという試練に抗う姿が格好いいです


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新幹線には殺し屋とか悪い奴とかがわちゃわちゃ乗っていて、お互いが出会ったなら後には不運な展開が待ち受けている。伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』はそんな展開が面白い小説でした。


スピード感と緊迫感と不運感が、本当、たまらなかったです。おそらくこの小説は”ついていない”という試練に立ち向かう物語だと思います。後半で『マリアビートル』の意味が説明されたとき、その意味深さに感動しました。



「もう、やめてよ、こういうの」七尾はもはや大人ぶる余裕もなく、子供が理不尽な仕打ちに泣き言をもらすように、弱音を吐いた。「勘弁してよ」


人生にはいくらかの試練があると思いますが、それらの試練が新幹線という閉鎖空間に凝縮されているように感じました。不運を選択と行動で乗り切っていく姿は、どこかが滑稽だけれども、たまらなく格好良かったです。


一生の中で体感する幸運と不運のそれぞれの総量は一緒であってほしいと願いがちです。しかし、総量は一緒ではなく、運は関わり合う人によって増減するようなものである、そういった考え方を得られた作品でした。