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『未開の惑星』誰かが報われて、そして誰かが報われない話


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松本次郎さんの漫画『未開の惑星』を読んだ後、「世界は誰かの犠牲の上に成り立っている」ような感覚が尾を引きました。


物語の舞台は暴力の溢れた戦禍の街で、そこに住む3人の幼なじみが何かを掴もうと足掻きます。踊り子のクッキー、パン売りのナオミ、そして主人公のコロ。クッキーは理想を追い求め続け、ナオミは現実に目を向け始め、コロは板挟みの中で現実と妄想を行ったり来たりしながら夢を追いかけます。


相反する思惑がそれぞれ耐え難い事態を引き起こし、やがて一つの結末に向かっていくのですが、その過程に胸が締め付けられました。この世界は、誰かが報われたのであれば、他の誰かは報われない仕組みになっているのではないだろうか。


未開の惑星  上

未開の惑星  上


その丘には大昔に墜落したと言われるロケットがあるだけで およそ他に記憶に残るものなんて何もなかったんだ


過去を回想するような導入で始まります。ロケットは、今の環境から脱出する手段であり、現状を変えようとする意思の象徴のようにも感じます。


どんなに劣悪な環境であっても、そこから脱出する方法はあると信じたい。たとえ脱出する方法が他の誰かを犠牲にしてでしか叶わないとしても、そこに希望があるのならば、脱出を実行する人は必ず現れるのではないだろうか。


人間はまだこんなにも不自由で残酷な世界にいて、しかもその環境の中で不幸だとか幸福だとかを嘆いていたりします。その事実に気づいた時、人の開拓精神に熱を帯び始めるのかもれない。そんなことを思いました。