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隠れた名作の発掘が生きがい。

『serial experiments lain』の世界にどこまで近づいたのだろう(2016)


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中学校時代に見た鬱アニメ『serial experiments lain』。難しい用語や解説なしには理解できないところが多々あって、何回か見返してもよく分からず、結局そのまま17年ほどの歳月が流れました。このアニメをふと思い出し、また見たくなって見返したのですが、経験値が貯まったおかげか、なんか内容がスラスラと分かる!


物語はリアルワールド(現実の世界)とワイヤード(インターネットの世界)、その二つの境界がなくなっていく過程を描いたような内容です。ワイヤードの根幹となる技術、そしてワイヤードとリアルワールドがシームレスとなる可能性の話がすごく素敵です。


革新的な技術の着想に胸が熱くなりながら、「lainの世界で描かれた技術は今どこまで普及しているのか」という疑問がふと浮かびました。そんなわけで、中学生時代に憧れたlainの世界と2016年現在の世界を比較して、相違のある所や気付きをメモしました。


LAYER:01 WEIRD

プログラミング教育

中学校の授業で教師が板書しているシーンがあるのですが、その内容がプログラミング言語でした。文法から察するにC言語です。最近では中学校でプログラミングの授業をするような取り組みが行われているようなので、もしかしたら必須授業になっていくのかもしれない。

音声操作でPCのユーザ認証(Voice Pass Word)

音声認識技術はますます普及しそうですよね。ちょっとした調べ物とかはSiriを使うようになってきています。ただ、音声でPCのロックを解除する操作とかは、技術的に可能となってきていますが、まだまだ普及はしなさそうな気がします。指紋認証や画像認証の方が楽だしね。

CRTモニタの6台同時ディスプレイ

この環境、すごく憧れたなー。大人になったらこんな環境を絶対作ろうと思っていたけれど、結局できていないです。今の技術でも実現は可能ですが、6台あっても全て活用できないと思います。PCはシンプルさを追求する方向に進んでいる気がします。

LAYER:02 GIRLS

電子ドラック(アクセラ

アクセラは薬のカプセルに入るくらいの大きさの電子部品で、飲むと時間の感覚が遅く感じるようになります。こんな電子部品が出たというようなニュースは聞いたことがないので、しばらくは世にあらわれないと思います。

LAYER:03 PSYCHE

PSYCHE(プシューケ/シューケー)

プロセッサの一種です。メインプロセッサの裏側にコネクトすると、本来の情報をインターセプトして勝手に動作し、ナビの性能を劇的にあげるようです。マルチコア技術に近いのかな?並列処理技術はあたりまえのようになってきています。

LAYER:04 RELIGION

岩倉玲音の過剰なPC拡張

PCを改造するシーンもすごく憧れたなー。計算機や周辺機器を何台もつなげて、何かしらハッカーっぽいことをしているシーン。PC機器は小型化が進んでいくので、アニメのような過剰な環境を作るのは逆に難しくなっていると思います。

PHANTOMa(ファントマ

ネットワークゲームです。処理内容は共通だけれど、インターフェースを取り替えることで別々のゲームに見せるような内容が描かれています。モバイルゲームやソーシャルゲームで利用されている技術のアイデアが、すでに1998年代にあっただなんて!

LAYER:05 DISTORTION

道路交通情報配信システム(VTCZX)と自動走行技術

渋滞情報などの道路交通情報をリアルタイムで提供するシステムです。自動走行の自動車に提供して最適なルートを走行させます。自動車の自動運転技術は実現に向けて試行錯誤している段階で、あと数年のうちに普及しそうな予感がします。

LAYER:06 KIDS

KIDS

子供たちが微弱ながら持っている超心理的な能力(PSI)を集約して何かを起こさせるシステムです。超能力の研究ってどこかでやっているのかなー?少なくとも、スプーン曲げとか誰もができる時代ではないです。

LAYER:07 SOCIETY

ワイヤードとリアルワールドの境界が崩れる

このアニメの骨子であり、一番興奮するところです。まだ実現には程遠いですが、モバイル端末やウェアラブル端末で誰もが手軽にインターネットにアクセスできる時代になり、ネットワークとの境界はますますなくなっていく予感がします。

LAYER:08 RUMORS

第7世代目のプロトコル

ヒトの記憶に繋げられるようなプロトコル。HTTPやSSHなど、いろんな通信プロトコルが増えてきていますが、今はやっと、PCと腕時計など異なるモノ同士での繋がりが普及し始めている段階です。モノ対ヒトが繋がりはじめるのも時間の問題なのかもしれない。

LAYER:09 PROTOCOL

人の記憶を操作する

人の記憶を消したり書き加えたりする研究は様々に行われていますが、まだ実用には至っていないようです。いずれ記憶は勉強して取得するものではなく、手軽にインストールできる時代が来るかもしれないですが、まだまだ先の話だと思います。

LAYER:10 LOVE

人工生命体(ホムンクルス

人が人のような生命を創造する。人レベルの知能と現実世界で活動できるための肉体を、まだ人工的には作成できてはいないようです。これから人工知能の分野はますます発展していくだろうし、ハードもその発展に追随しそうです。Pepperとか市場に出始めたしね。

LAYER:11 INFORNOGRAPHY

人にナビをエミュレートさせる

人の持つ脳、または、身体のリソースを利用して、何かしらの演算を肩代わりさせる。言うなれば、人の中にコンピュータを持たせるような技術です。どこかで研究していそうなテーマですよね。

LAYER:12 LANDSCAPE

ワイヤードにリアルワードの記憶を転移

人の持つ身体や記憶を情報化して、ネットワーク上にその情報を転移する。おそらくこれ、人類のひとつの到達点だと思います。人が寿命を克服したことを意味し、同時に人は無限に近い時間を手に入れたことになります。そして、人は次なる進化に向かうのだろうなー。

LAYER:13 EGO

All Reset

世界を元の状態に戻す技術。現実世界を元に戻す方法は全然想像がつかないですが、コンピュータの世界であればあるチェックポイント以降の記録を全削除することで実現できそうな気がします。まぁでも、まずは神のような存在になっていることが必要です。

結論

全話を見返してみて思ったことは、まだまだAll Resetまでの道筋は長いなーということです。しかし、現実世界と人工世界とを融和させようとする試みは今後も続くだろうし、技術の進歩は指数関数的な速度で進むということを考えると、いずれは実現できそうな気配がします。


まぁ、でもその時まで生きていないだろうなぁ。願わくは、生きているうちに、インターネット上に人の記憶を転移する技術ができていて欲しい。