『ヴォイド・シェイパ』シリーズの5作目『マインド・クァンチャ』。著者の森博嗣さんのページによると、
これでシリーズ完結としても良いと思っています。次も書くかどうかは、まだ決めていません。
とのことなので、おそらくはこの巻で完結です。「剣士の生き方、格好良い!」を感じる小説でした。
『マインド・クァンチャ』の英題は「The Mind Quencher」です。Quencherとは抑制とか消すとかいう意味です。和訳すると「心を抑制する者」です。
今までのシリーズのタイトルをまとめると、次のようになります。
巻 | 邦題 | 英題 | 和訳 |
---|---|---|---|
1 | ヴォイド・シェイパ | The Void Shaper | 虚空を形作る者 |
2 | ブラッド・スクーパ | The Blood Scooper | 血をすくう者 |
3 | スカル・ブレーカ | The Skull Breaker | 頭蓋を破壊する者 |
4 | フォグ・ハイダ | The Fog Hider | 霧に隠れる者 |
5 | マインド・クァンチャ | The Mind Quencher | 心を抑制する者 |
振り返ってみると、『ヴォイド・シェイパ』シリーズは「守破離」の流れを辿っているように思いました。1、2巻では剣士の本質を確認する話、3、4巻では強者と戦って成長する話です。そして最後の5巻では、一度負けることで新しい境地に立つ、そんな内容のように思いました。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/05/27
- メディア: Kindle版
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不足しているものは、無だった。
唯一必要だったのは、無だ。
失うことで強くなる、そんな物語がたくさんあります。その理屈はなんとなく分かります。
自分が大切だと思って蓄えているもの(例えばお金)があるとします。その大切なものが増えると、それを守る労力も増えていきます。そして新しい価値巻を取り入れる余力がなくなり、いつしか「貯めているものの大きさ=強さ」という信仰につながっていきます。
大切なものが無くなった時、本当に大切なものが何だったのかを考える余力が生まれます。そして、その考えた結果が次の強さにつながっていきます。『マインド・クァンチャ』は戦いに負けて次の強さを得る、そんな物語のように思いました。
あと、ノギさんのシーン感動です。うるってきます。いい結末でした。
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