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『マインド・クァンチャ』忘れることで強くなる、そんな剣士像に惚れます


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ヴォイド・シェイパ』シリーズの5作目『マインド・クァンチャ』。著者の森博嗣さんのページによると、

これでシリーズ完結としても良いと思っています。次も書くかどうかは、まだ決めていません。


とのことなので、おそらくはこの巻で完結です。「剣士の生き方、格好良い!」を感じる小説でした。


『マインド・クァンチャ』の英題は「The Mind Quencher」です。Quencherとは抑制とか消すとかいう意味です。和訳すると「心を抑制する者」です。


今までのシリーズのタイトルをまとめると、次のようになります。

邦題 英題 和訳
1 ヴォイド・シェイパ The Void Shaper 虚空を形作る者
2 ブラッド・スクーパ The Blood Scooper 血をすくう者
3 スカル・ブレーカ The Skull Breaker 頭蓋を破壊する者
4 フォグ・ハイダ The Fog Hider 霧に隠れる者
5 マインド・クァンチャ The Mind Quencher 心を抑制する者


振り返ってみると、『ヴォイド・シェイパ』シリーズは「守破離」の流れを辿っているように思いました。1、2巻では剣士の本質を確認する話、3、4巻では強者と戦って成長する話です。そして最後の5巻では、一度負けることで新しい境地に立つ、そんな内容のように思いました。



不足しているものは、無だった。
唯一必要だったのは、無だ。


失うことで強くなる、そんな物語がたくさんあります。その理屈はなんとなく分かります。


自分が大切だと思って蓄えているもの(例えばお金)があるとします。その大切なものが増えると、それを守る労力も増えていきます。そして新しい価値巻を取り入れる余力がなくなり、いつしか「貯めているものの大きさ=強さ」という信仰につながっていきます。


大切なものが無くなった時、本当に大切なものが何だったのかを考える余力が生まれます。そして、その考えた結果が次の強さにつながっていきます。『マインド・クァンチャ』は戦いに負けて次の強さを得る、そんな物語のように思いました。


あと、ノギさんのシーン感動です。うるってきます。いい結末でした。


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