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隠れた名作の発掘が生きがい。

『キマイラの新しい城』密室の謎はとてもシンプル、だけど気づけない


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750年前に起きた死の謎、解ける?


そんなむちゃぶりの事件に挑む小説が殊能将之さんの『キマイラの新しい城』です。石動戯作(いするぎぎさく)シリーズの第4作目です。


舞台は千葉の山奥のファンタジーランドに再建された「シメール城」。この城は、750年前、中世のフランス北部にあった古城であり、稲妻卿「エドガー・ランペール」が城主であった。


シメール城を再建した会社の社長「江里陸夫(えさとりくお)」は稲妻卿の亡霊に取り憑かれます。そして、稲妻卿を殺したのが誰かわかるまで江里の肉体から成仏できない状態になります。


750年前に起きた稲妻卿の死の真相を探るべく、名探偵の石動戯作がシメール城に招待されます。そして、石動戯作は、関係者を集めて当時の状況を再現し、その密室殺人のような状況の真相を解き明かします。


ひと段落した後、稲妻卿が死んだ部屋で殺人事件が起きます。事件の主犯として疑われた稲妻卿は逃亡を試みます…



シメール城で起きた750年前の事件と現代の事件。2つの事件に共通する「密室」の真相を明らかにしていく内容なのですが、その真相に驚愕します。


先に750年前の事件の真相を追ったことのよってある先入観が読み手に埋め込まれます。その先入観が現代の密室の謎に大きく関わっているのですが、その謎がたった一言で明らかになる…その展開が一番の面白いところでした。


また、物語は多視点で書かれているのですが、稲妻卿の視点で書かれる文書も面白いです。750年前のフランスの城主が現代の日本を体感する表現が良いです。例えば次の表題。

稲妻卿がロポンギルスに入城し、異教の神殿をさまようこと


まるでロールプレイングゲームをプレイしているような、そんな表現のセンスに惚れ惚れします。『キマイラの新しい城』は、推理だけではないエンタテイメントさも強く感じられる小説でした。


石動戯作シリーズ:
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