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隠れた名作の発掘が生きがい。

年刊日本SF傑作選 量子回廊


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2009年に話題になった短編SFをまとめた文庫です.瀬名秀明さんの『For a breath I tarry』は自分の存在確率の意味を考えさせられる作品でした.松崎有理さんの『あがり』は絶望と希望が織り交じった収束が素敵でした.他にも八木ナガハルさんの『無限登山』,円城塔さんの『バナナ剥きには最適の日々』などなど,面白い話がたくさんあったのですが,その中でもとりわけ倉田タカシさんの作品が非常に面白かったのでピックアップします.


倉田タカシ 『紙片50』
紙片50はtwitterで発表した文章を名刺サイズのカード50枚に印字したものだそうです.twitter小説と呼ばれ,140文字以下で詩的な物語を綴っています.たった数行に渡る文字の羅列で,物語の概要を伝え,不可思議な余韻を残していく表現力に圧巻です.この世界とズレた世界に登場する人称が何かを呟き,その呟きが世界の真相を知るためのヒントになっています.


twitter小説というものをはじめて本格的に読みましたが,その魅力は読者に文章表現に漏れた情報を創造する余地が与えられることにあると思います.紙片50に綴られた作品は,世界観に想像の余地が多くあるように感じました.機械と肉の話,幻獣租界,かならず戻るといったのにの話がとても素敵でした.また,毎朝シリーズは,快活な文章のリズムに合わせ,よく分からないものを吐露してすっきりします.


量子回廊 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

量子回廊 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)