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隠れた名作の発掘が生きがい。

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』力を求めて足掻いた感覚が蘇る


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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』という、中学二年生のときに持っていた感性を呼び起こさせるようなタイトルの小説をやっと読みました。いやー、もどかしくていたたまれない感覚が尾を引きましたぜ。


内容は、実弾を欲している主人公の山田なぎさと、海野藻屑というすごい名前の少女との合流を描くような青春小説です。作者は桜庭一樹さんで、2006年度「このライトノベルがすごい!」の3位に入っている小説です。英題は『A Lollypop or A Bullet』。


砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (角川文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (角川文庫)


だけどその子がのべつなくまし撃っているのは、空想的弾丸だ


学生のころ、世界に対応できるだけの何かしらの力を手に入れようと足掻いていた感覚がある。本作はそんな感覚をテーマに描いたような作品で、その感覚の描写センスがすごく素敵です。"実弾"と"砂糖菓子の弾丸"という2つの観点のせめぎあいが、やがて融和していく感覚に心が震えました。


読み始めて少しすると最後にどうなるかがだいたい予想できてしまいます。なので、どこか距離をおいて読み進めていたのですが、その距離を縮めるくらいの引力が物語の中核にあって、途中からはその最後が嘘であって欲しいと願いながら読み進んだ小説でした。