ヒーローというものは、正義の塊みたいなもので、大衆にとって平均的に悪だと認知されているものを倒すものである。そんな子供の頃に植え付けられたような価値観の尺度を刷新するような作品が『ウォッチメン(Watchmen)』でした。1986年代に出版された漫画で、2009年には映画にもなっています。
内容は、ヒーロー達が存在するアメリカで一人のヒーローが殺されたところから始まります。ヒーローを殺した犯人を探していく中で、ヒーロー達の過去やすごい陰謀とかが明らかになっていきます。ヒーローの裏の姿が炙りだされるような内容がすごく刺激的でした。
WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books)
- 作者: アラン・ムーア,デイブ・ギボンズ,石川裕人,秋友克也,沖恭一郎,海法紀光
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2009/02/28
- メディア: 単行本
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私は我が友の忠告を常に聞く。
「彼女に閂を掛け、拘束せよ!」
しかし、誰が見張りを見張るのか?
妻は手筈を整えて、彼らと事を始める
本作は、悪を見張るヒーローを見張る、というような視点から、ヒーローひとりひとりの人間に迫って正体を露わにする展開がすごく面白いです。そのため、ヒーローの人間性をより感じるような内容であり、同時にヒーローの中にも悪と感じる要素があることに気づきます。
日本のヒーロー像とアメリカのヒーロー像の違いのひとつには、それが人間らしいかどうか挙げられる、というようなことを何処かで聞いた記憶があります。
たしかに、子供の頃に見た日本のヒーローものの番組は正義を全面に押し出したような完璧に近い存在で、人間らしいというよりは神に近い感じでした。一方、アメリカのヒーローもの映画は人間的な要素が強くなったイメージで、神というよりはやっぱり人間らしさを感じがしました。
『ウォッチメン』はその人間らしさがより顕著に感じられる作品だと思います。ヒーローなのに悪いと感じることをしたり、正義を信じて殺人を犯したりと、正義は立場や視点によって違うという軸が見事に絡み合っていて、それが人間らしい社会を作っているのだと感じさせられるような作品でした。