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『ネの國の雲』匿名が作り出すアンダーグラウンドな怖さ


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インターネット上には「匿名」という怖さがありますよね。何者か分からない誰かが何かを書いている、そんな怖さです。


掲示板やチャットで書いた文章があたかも総意となって振る舞うとき、インターネットの持つ力と恐ろしさを同時に感じたりします。そんな恐怖を味わえる漫画が宗我部としのりさんの『ネの國の雲』です。

情報の共有は人々から未知を奪い
地上の闇は消え 怪異は住処を失った

だが……彼らはそこを見つけた


そんなわけでネットワークの雲の中に怪異の居場所ができる、というのが物語の導入です。


この漫画の節々から感じるアンダーグラウンド感が魅力的な部分です。90年代後半のインターネットでアングラサイトを覗くような怖さがあります。アニメの『serial experiments lain』でネットワークの裏側を見ちゃったような怖さ、がイメージしやすいですかね(?)


「このアングラ感をSNSが浸透した2010年代に適用したら?」を描いたような内容がこの漫画です。インターネットと現実とがより近くのように感じるようになった社会。SNSでの発言は現実に影響を与えやすくなってきたわけで…


ネの國の雲 (ガムコミックスプラス)

ネの國の雲 (ガムコミックスプラス)


漫画は5編の短編からなっています。それぞれ独立したストーリーですが、どのストーリーにも女子学生の「丑乃刻さだめ(うしのこくさだめ)」が、"ネの國"との調停役として登場します。

ファイル_01:ナナシノカレシ

とある女子学生が友達から紹介してもらった裏掲示板に恋愛相談を書き込んだところ、炎上します。レスには「名無しのカレシ」に関する呪文が書かれ…


インターネットのコミュニティ上には「匿名の不特定多数という暴力」が裏に存在しています。その暴力の犠牲になったとしたら、行き場のない怨みがどこかに溜まっていそうなわけで。

ファイル_02:ナナシノデンパ

裏掲示板にとある女子学生のひどい写真が掲載された。その学生は報復に野良WiFiを経由して暴露レスを返したら、その対象相手が発火し…


誰かを攻撃するのであれば自分も攻撃されることも想定しなければいけない。匿名であったとしても攻撃される可能性は常にあります。それを忘れて調子にのると悲惨なことになりそうです。

ファイル_03:ナナシノジュヨウ

「名無しの女優」が出演したエロ動画は、その女優を自分の強く念じた女の子に姿を変えて再生できる動画だった。ただし、動画再生の途中で目を離すと呪い殺しにくるという制約があり…


危険だと分かっていてもそこにエロがあるのであれば試す。男の性欲って愚かだなーって思いますよね。性欲は油断を生みやすく、そして恨みも受けやすいです。

ファイル_04:ナナシノムラ

昔、とある惨劇によって地図上から消えた村があり、その村がネットワークを介して住宅街に来る話です。かつて村で行われた惨劇が、その住宅街で繰り返されようとして…


ただ、あるランドマークがあったというだけでターゲットとなった住宅街。理不尽に一方的に行われる殺戮はとても報われないですよね…

ファイル_05:ナナシノキオク

「カゲ無し」の写ったある海岸の写真がSNSに投稿された。その海岸の近くに住んでいたことがある女子学生が、その写真を撮りに行くことになり…


幼少期に地元で交友のあった人はどうなっているだろうか。忘れた頃に偶然に出会ったとしたならば、警戒した方が良いかもね。そんな話でした。