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隠れた名作の発掘が生きがい。

『善良なる異端の街』世界は理不尽に誰かを犠牲にします


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正しいことをしていても、報われるとは限らないです。


家族のために頑張って働いていても、家族からは無視されたりします。周りに合わせて甘いものを食べ続けると、病気が悪化したりします。良い人でいた分だけ自分に見返りがあると期待するのは間違いです。


正しいことをしているけれど理不尽な仕打ちを受ける、そんな話のある漫画が『善良なる異端の街』です。善良な人であれ不良な人であれ、不幸は平等に訪れる、そんな不条理さを感じました。


社会や街、あるいは組織といった集団は、誰かが犠牲になることでうまく機能しているように思います。その犠牲者の視点で描かれる7編のショートストーリーは、どれも行き場のない余韻を残していきました。


善良なる異端の街

善良なる異端の街


わたしのお父さん

でも お父さんはどんな時もがまんします

お父さんが我慢する話です。父はおやじ狩りにあったり、母は新興宗教にはまっていたり、娘は夜遊びしていたり…家庭を持つということは大きな我慢が必要です。善良なだけでは生きていくのが難しいです。



カミーラ

彼女は一体何者で いつから 何故にここにいるのでしょうか……

窓の向こう側を眺める女性にトキメク話です。彼女の書く手紙が、主人公(カミーラ)を乱れさしていきます。錯乱する引き金はきっとどこかにあって、その引き金は善良な人であっても引いてしまう。不条理さを感じる話でした。


遠くの方

美しい遠景を見たければ汗水を垂らし…泥にまみれて高みへ登るんだ!

書生が書簡をある先生のもとへ届けに行く話です。遠くを目指すことは、美徳なことなので、多少悪いことしても問題ない、そんな思想におちいりがちです。見るべきところはもっと他にあるのに、なかなか気が付けないものです。


PARLOR31

自衛の為には病気になってもつるんでなきゃいけないんだ 私みたいに

お菓子を食べると体が発作を起こす、そんな病気にかかった女子高生の話です。周りに合わせてお菓子を食べ続け、そして破滅へと近づく…周りと同調することは善良に見えてしまいがちですが、ただ自分の首を絞めているだけなのかもしれない。


砂漠のフェーデ

ここは彼にとって 彼女と愛を語り合える唯一の聖域なのだから…

少年たちは砂漠にそびえ建つ「塔」を奪い合う私闘(フェーデ)を繰り広げます。塔を欲しがるのはただ単純な私欲のためです。愛のかたちはいろいろあって、そのかたちが不純であっても、時には美しく感じてしまいます。


女子高兵

生き残る為には「人間」を捨てなければならない

女子高生型の兵器「女子高兵」に乗ったまま暴走した仲間を追撃する話です。もし人型の乗り物に乗るのであれば、搭乗者の人格はその乗り物のペルソナに影響されやすいと思います。真面目な人ほど影響度は強いのではないだろうか…


ふぁみれす

ざけんなっ って感じですよね フフフ

ファミレス店員の働く姿の裏側を見学するような話です。ファミレス店員も人間なので、客にイライラしたり、愚痴をこぼしたりします。接客する姿はあくまで仕事をしている姿であって、本性は分からないものです。


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