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損益分岐点分析(CVP分析)の基本とモデルの比較


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損益分岐点分析とは、費用、販売量、利益の関係性を明らかにする手法です。損益分岐点分析はCVP分析とも呼ばれ、CVPはそれぞれCost(費用)、Volume(販売量)、Profit(利益)を意味します。


損益分岐点分析について


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例として、ある商品を製造して販売するとします。この商品の売上高は、販売価格と販売量に依存します。売上高が販売量に比例するとき、売上高は以下の式で表されます。

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また、一連の経営活動には商品の製造費や人件費などの費用がかかります。費用は大きく固定費と変動費の2つに分けられ、それらの違いはそれぞれ販売量に依存するかしないかです。変動費が販売量に比例するとき、費用は以下の式で表されます。

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売上高、費用と販売量との関係をグラフにすると上図のようになります。また、売上高と費用との差がプラスのときは利益、マイナスのときは損失を表します。この利益と損失の分岐となる点を損益分岐点と呼びます。


ここでは、まず損益分岐点の特性を述べた後、売上高の評価に役立つ指標(限界利益率、安全余裕率)を説明します。また、一般的に言われている業種別のCVPモデルの違いについて述べます。


損益分岐点

損益分岐点とは売上高と費用が一致する点であり、損失と利益が0となる点です。損益分岐点の販売量は次の関係があります。

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上式を考慮すると、例えば少ない販売量で利益を得たいとき、考えられる利益計画は3つあります。それは、固定費を下げる、販売価格を上げる、変動比率を下げることです。


損益分岐点の販売量の導出
式(3)は式(1)、(2)と売上高=費用の条件から導出されます。

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限界利益(率)

限界利益とは売上高と変動費との差です。また、限界利益率とは売上高に占める限界利益の割合です。

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ここで、式(4)、(5)の解釈のために、利益または損失が売上高と費用との差からなることを考えます。

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限界利益と固定費との差が利益または損失になります。つまり、限界利益率は、売上高から固定費の支払いがどの程度まかなえるかの指標と考えられます。そのため、例えばある設備投資を行うと固定費が増えて利益が下がるとしても、限界利益率が上がるのであれば「固定費の支払いが前よりも余裕をもってまかなえる」との判断ができます。


また、損益分岐点の売上高は限界利益率を用いても計算することができます。

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損益分岐点の売上高は、販売価格と損益分岐点の販売量との積です。その積から式(3)、(4)、(5)を考慮して変形することで損益分岐点の売上高が導出されます。

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安全余裕率


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安全余裕率とは、ある売上高または販売量が損益分岐点からどのくらい離れているかを表す指標です。損益分岐点比率とは、ある売上高に占める損益分岐点の売上高の割合です。

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安全余裕率が高いほど、売上高が損益分岐点から離れていることを示しています。つまり、売上高がどの程度まで下がっても安全であるかを定量評価します。


CVPモデルの比較


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業種別のCVPモデルを比較します。ただし、異なる業種を比較する場合、扱う商品や販売量が違うため、CVPモデルの横軸は売上高で規格化しています。


(A)は製造業に多いモデルです。設備投資によって生じる減価償却費などの固定費は多いですが、変動費は固定費に比べて相対的に少ないです。売上高が損益分岐点を超えると、売上高に対する利益率は高いといった特徴を持っています。


(B)は流通業に多いモデルです。固定費は少ないですが、仕入れによる費用や広告宣伝費などの変動費は固定費に比べて相対的に多いです。売上高が損益分岐点を超えると、売上高に対する利益率は低いといった特徴を持っています。


(A)、(B)を考慮すると、固定費と変動費が少ないモデルが理想に感じます。一般に、IT産業にそのモデルが多いと言われています。