マイナー・マイナー

隠れた名作の発掘が生きがい。

『小説BLAME! 大地の記憶』途方も無い時間、忘れられない何か

冲方丁 × 弐瓶勉


もうね、面白くないわけがない! 弐瓶勉さんの『BLAME!』を冲方丁さんの語りで描く、そんな夢のコラボが『小説BLAME! 大地の記憶』です。


小説は、漫画『BLAME!』の最初のあたり(LOG.1〜11)を描いた内容となっています。基本的には原作に沿った内容ですが、途中からオリジナルなストーリー展開を見せます。


BLAME!』の名シーンの一つといえば、「LOG.2::大地の記憶」で主人公の霧亥がハードコピーの本を手に持ちながら「大地って何だ」と発するシーンです。この一言は「大地が何か分からない」という途方もなさを感じる名言だと思います。


小説版は、タイトルにもあるように、「大地の記憶」が一つの軸になっています。霧亥が大地に想いを馳せる姿、、そこに素敵で熱いものを感じます。霧亥の持つ人間性を垣間見ることができるような内容でした。


小説BLAME! 大地の記憶

小説BLAME! 大地の記憶

冷たく静かな大地が明るくなる頃、人影は丘の上に登った


ハードコピーの一文ですが、小説版ではこの続きが書かれています。おそらくは冲方丁さんのオリジナルの文章だと思いますが、その文章にはとてつもなく長い旅を支える希望を感じました。


あと、漫画は口数や説明の少ないのが特徴でしたが、小説は文章で書くということもあって、細かな描写が多々あります。そして漫画を読んでいて気付けなかったことにも気付けたりもしました。


例えば、LOG.2ででかい機械を片腕で持ち運びする女性。実は女性自体に腕はなく、マシンスーツの補助で腕を動かしています。改めて漫画を読み返して見ると、たしかにそうだ!


BLAME!』は大好きな漫画のひとつで、結構読み込んでいるという自負はあったのですが、この小説を読んでまだまだ読み込みが足りていないと実感しました…そして同時に、BLAME!の世界を丁寧に描く冲方丁さんにBLAME!愛を感じる小説でもありました。

小説と漫画の違い

以下は小説と漫画のBLAME!で対応している箇所とオリジナルの箇所のメモです。ご参考までに。

小説の章 原作
1 - 5 LOG.1::ネット端末遺伝子
6 LOG.2::大地の記憶
7 LOG.4::統治局
8 - 10 LOG.8::塊都
11 - 14 LOG.9::生電社 ※ここから大きくオリジナル展開
15 - 16 (オリジナル)
17 LOG.6::珪素生命
18 - 20 LOG.9::生電社 ※頭取との戦闘
21 - 22 (オリジナル)
23 LOG.9::生電社, LOG.10::ネット球, LOG.11::セーフガード
24 (オリジナル)

『劇場版BLAME! 弐瓶勉描きおろし設定資料集』が熱い件

熱いです、10数年を経て再構成された劇場版『BLAME!


劇場版は、原作漫画が完結してから間が空いたこともあって、絵のタッチや内容がやわらかくなっているように思いました。原作が登場人物の口数少なく無機的なのに対し、劇場版は口数が多く有機的に感じます。


そんな弐瓶勉さんの質の変化を感じることができる魅力的な一冊が『劇場版BLAME! 弐瓶勉描きおろし設定資料集』です。原作の無機的な感じも好きですけど、劇場版の表情豊かなシボやサナカンもいいよね!


紙媒体だけでなく、Kindle版も出版です。もちろん両方購入です。Kindle版は見開きの絵が継ぎ目なく見れるのが良いです。「大平盤01」とか「づるの部屋付近」が切れ目なく見れる!


キャラクター設定資料編

漫画の「新装版 BLAME!」の1巻(霧亥)、2巻(シボ)、3巻(サナカン)の表紙を正面、側面、背面から堪能できるカットがあります。霧亥のスキンスーツの中身とか、シボの素体とかがめっちゃ良いです。


個人的に、劇場版BLAME! で登場した機械の中では偽装ネット端末遺伝子が一番好きです。シボと接続されたシーンはもっと好きです。壁紙作って欲しい。

背景設定資料編

づる達のいる集落ってすごい素敵ですよね。「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」に出てきそうな集落です。


周囲は建設者が作った人の住んでいない場所は整然たる風景ですけど、人間の住む場所には人間味が出てきます。これらのギャップに魅力的なものを感じます。絶望的な環境でも人間は生きている。

動画設定資料編

絵コンテも堪能できます。映像化にあたっての下書きですが、コマ割で書かれているので漫画みたいに読めます。映画の振り返りにちょうど良いです。


サナカンの笑顔シーン、良いですよ。そして、シボが偽装ネット端末遺伝子に接続するコンテがすごくもえる!誰か壁紙作って欲しいなぁ。。


minor.hatenablog.com

劇場版『BLAME!』の原作とは違う熱い設定のまとめ

弐瓶勉先生の名作漫画『BLAME!』の劇場版アニメが熱いです!


https://www.blame.jp/www.blame.jp


巨大な都市階層の世界と戦闘シーンが素敵すぎますよね。内容は原作に沿ったものではなく、原作の設定を所々引用して作られたようなストーリーでした。原作とは違う設定も出てきます。そんな設定に劇場版ならではの素敵さがあります。


そんなわけで、原作と相違ある設定で、個人的に熱かったところをまとめました。ネタバレ注意!

  • 監視塔
  • 霧亥が持ってきた食料
  • くされ祠
  • 自動工場
  • 偽装端末
  • 塗布防電発生装置
  • 謎のドーピング剤
  • イメージと違ってびっくりしたところ
    • セーフガードの動き
    • サナカンの自己紹介
    • えっ、珪素生物出てこないの?
続きを読む

【Node.js】Promiseを利用してAPIを並列に呼び出す

あるAPIを並列に呼び出し、
1. APIへのリクエストがすべて成功したらSuccess
2. APIへのリクエストがひとつでも失敗したらFailure
する、そんなプログラムを書きました。Node.jsとPromiseで実装しました。

  • サンプルコード
    • クライアント側
    • サーバ側
  • 処理結果
    • すべてのリクエストが成功する場合
    • ひとつでもリクエストが失敗する場合
続きを読む

バラエティ豊富な不快をどうぞ『肉食屋敷』

小林泰三さんの短編小説『肉食屋敷』は、バラエティに富んだ不快系ホラーな作品です。4つの短編で構成されていて、「怪獣小説」「西部劇」「サイコスリラー」「ミステリー」と、さまざまなジャンルがそろっています。


小林泰三さんの小説といえば、グロい内容であればとことんグロく、サイコな内容であればとことんサイコなのが特徴です。しかし、『肉食屋敷』はグロさとサイコさが控えめであるため、耐性がない人にとっては読みやすい小説だと思いました。


エグい描写は控えめでしたが、気がつけば眉間にしわを寄せながら読んでいました。おそらくは「不快」に感じる部分が多くあって、そこには関わりたくないと本能が訴えているのだと思います。


そんな一風変わった怖さが魅力的な小説、それが『肉食屋敷』でした。あ、エグい描写は少ないとはいっても、平均以上にエグい描写はやっぱりあるので注意!


肉食屋敷

役場に努める公務員がとある研究所を訪れたらひどい目にあった話です。恐竜が生きていた時代の地層から採取したDNAを復元したら、とんでもない生物だった。未知のものに手を出すのは良いけれど、それにはリスクを伴うという教訓が得られる話ですね。

ジャンク

とある荒野でハンターを狩る「ハンターキラー」の話です。ハンターキラーの胸にはとある女性の顔が移植されています。ハンターキラーにとっては大切な一部、そこには悲しい過去が。人間の臓器や神経を利用するような、腐臭漂う世界観が魅力的です。

妻への三通の告白

病気で寝たきりの妻に宛てた手紙を読んでいくような内容です。読んでいくと違和感や齟齬が感じます。そして最後の方でうわぁーってなります。人の思い込みは自由な領域であり、勝ち負けや幸不幸は思い込みで決定するものです。人生に勝つ話。


関連
minor.hatenablog.com

獣の記憶

知らぬ間に女性の死体が自宅に…別の人格「敵対者」に抗う話です。敵対者とノートを通じて対話するのですが、だんだんと壊れた対話になっていく過程にゾッとするものを感じます。自分の意識の外で何かやられているという恐怖が素敵な話です。