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隠れた名作の発掘が生きがい。

バラエティ豊富な不快をどうぞ『肉食屋敷』


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小林泰三さんの短編小説『肉食屋敷』は、バラエティに富んだ不快系ホラーな作品です。4つの短編で構成されていて、「怪獣小説」「西部劇」「サイコスリラー」「ミステリー」と、さまざまなジャンルがそろっています。


小林泰三さんの小説といえば、グロい内容であればとことんグロく、サイコな内容であればとことんサイコなのが特徴です。しかし、『肉食屋敷』はグロさとサイコさが控えめであるため、耐性がない人にとっては読みやすい小説だと思いました。


エグい描写は控えめでしたが、気がつけば眉間にしわを寄せながら読んでいました。おそらくは「不快」に感じる部分が多くあって、そこには関わりたくないと本能が訴えているのだと思います。


そんな一風変わった怖さが魅力的な小説、それが『肉食屋敷』でした。あ、エグい描写は少ないとはいっても、平均以上にエグい描写はやっぱりあるので注意!


肉食屋敷

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