小林泰三さんの短編小説『肉食屋敷』は、バラエティに富んだ不快系ホラーな作品です。4つの短編で構成されていて、「怪獣小説」「西部劇」「サイコスリラー」「ミステリー」と、さまざまなジャンルがそろっています。
小林泰三さんの小説といえば、グロい内容であればとことんグロく、サイコな内容であればとことんサイコなのが特徴です。しかし、『肉食屋敷』はグロさとサイコさが控えめであるため、耐性がない人にとっては読みやすい小説だと思いました。
エグい描写は控えめでしたが、気がつけば眉間にしわを寄せながら読んでいました。おそらくは「不快」に感じる部分が多くあって、そこには関わりたくないと本能が訴えているのだと思います。
そんな一風変わった怖さが魅力的な小説、それが『肉食屋敷』でした。あ、エグい描写は少ないとはいっても、平均以上にエグい描写はやっぱりあるので注意!
- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/01/24
- メディア: Kindle版
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肉食屋敷
役場に努める公務員がとある研究所を訪れたらひどい目にあった話です。恐竜が生きていた時代の地層から採取したDNAを復元したら、とんでもない生物だった。未知のものに手を出すのは良いけれど、それにはリスクを伴うという教訓が得られる話ですね。
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