マイナー・マイナー

隠れた名作の発掘が生きがい。

『老ヴォールの惑星』絶望的な状況に抗うという美しさ

生きることは可能だけど、そこで生き続けることに耐えられるかどうか…そんな状況に置かれる小説が小川一水さんの『老ヴォールの惑星』です。


この小説は4編の短編で構成されています。地下の迷宮、海水に覆われた惑星など、様々な絶望的な環境・状況が舞台になります。どの短編もそんな絶望に抗うような内容になっています。


絶望的な状況であっても、大切な何かを守るために抗うのであれば、そこに一筋の希望が宿るとに思います。『老ヴォールの惑星』はその希望の美しさを体感できる小説でした。


老ヴォールの惑星

老ヴォールの惑星


以下は各短編の内容と読んだ感想です。

ギャルナフカの迷宮

犯罪を犯した(とされる)人が地下の迷宮に投獄される話です。投獄される前に渡されたのは水と食料が示された地図だけ。広大な迷宮には同じ境遇の人がたくさんいて…


絶望的な環境の中で抗う描写が素敵です。劣悪な環境であっても人間性を失わなければ救われる可能性がある、そんなことを感じます。人間は一人では生きていけないことを再認識する話です。

老ヴォールの惑星

熱風の惑星「サラーハ」に誕生した生命体達の物語です。あるとき、数万日後にサラーハの生命体達を壊滅させるほどの巨大な天体が衝突することが分かり…


絶命が不可避な状況に追い込まれたとき、生命体は一番大切なモノを死守するために行動します。その行動にとても心に響く何かを感じるはずです。記憶を紡ぐような話です。

幸せになる箱庭

人類は木星から資源を調達している機械を発見した。このまま資源調達が行われ続けると地球の軌道に影響を及ぼしてしまうため、その機械を作った主に資源調達の中止を要求するためにコンタクトします。


人類よりも高度な科学技術を持った知的生命体と出会ったのであれば、人類はその知的生命体の手の上でただ遊んでいるだけになるのだろうなぁ…そんな話でした。

漂った男

海水に覆われた惑星に墜落し、救助を待つ男の話です。海水には生命を維持できるだけの栄養が含まれているため、いつ来るとも分からない救助をずっと待つことができるわけで…


人は、孤独な環境であっても、いずれは適応できる生き物だと思います。住めば都、けれどもよりよい環境はきっとあるので、それを探求することを怠ってはいけないですね。

【アンノーン捕獲の旅】みなとみらいのポケモンGoイベントを楽しんできました

横浜市のみなとみらいで実施のポケモン祭に行ってきました!
(開催期間は2017年8月9日〜8月15日)


ポケモンGoでレアポケモンアンノーンが出るということで行ってきました。カップヌードルミュージアムパーク(ジョウトパーク)と赤レンガ倉庫(カントーパーク)を中心になかなか出ないようなポケモンがわんさか出ました!

10時頃 横浜駅

「とりあえず赤レンガ倉庫に向かおう!」ということで、徒歩でそこへと向かう。そして公園の敷地に踏み入れてしばらく進むと大量のピカチュウに歓迎されます。これは楽しいことになりそうだぜ!

バリヤード出た

赤レンガ倉庫に近づくに連れてバリヤードが出てきます。さらに進むともっと出てきます。ボコボコ出てきます。最初は浮かれて捕獲していましたが、7匹捕まえた段階で「もうええよ…」と思えてきます。


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もうええよ…

アンノーン出た

1日中歩いて2、3匹捕まえられれば良いかなと思ってましたが、最終的には14匹ゲットという結果に(種類としては6種)。アンノーンが出ると、集団が動くので、その方向に進むとだいたい見つかると思います。ただ、集団が一斉に通信して回線が耐えられなくなるせいか、ネットワークエラーは頻発に起きました。


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わんさか取れた

他にも色々出た

メリープ」「ブルー」「ラッキー」「ヨーギラス」も高頻度で出ます。これが結構嬉しい!17時まで粘った戦果は下の通りです。

ポケモン 捕獲数
メリープ 28 匹
ブルー 15 匹
ラッキー 8 匹
ヨーギラス 6 匹


日焼けピカチューも出るそうですが、残念ながら見つからずでした…

まとめ

人すごかったです…1万人以上は来てたんじゃないかな?ポケモンGoのプレイ人口は少なくなったといっても、来場者数を目の当たりにするとまだ数年は戦えると実感できました。いやー、めっちゃ疲れたー。


関連:
minor.hatenablog.com

『ネの國の雲』匿名が作り出すアンダーグラウンドな怖さ

インターネット上には「匿名」という怖さがありますよね。何者か分からない誰かが何かを書いている、そんな怖さです。


掲示板やチャットで書いた文章があたかも総意となって振る舞うとき、インターネットの持つ力と恐ろしさを同時に感じたりします。そんな恐怖を味わえる漫画が宗我部としのりさんの『ネの國の雲』です。

情報の共有は人々から未知を奪い
地上の闇は消え 怪異は住処を失った

だが……彼らはそこを見つけた


そんなわけでネットワークの雲の中に怪異の居場所ができる、というのが物語の導入です。


この漫画の節々から感じるアンダーグラウンド感が魅力的な部分です。90年代後半のインターネットでアングラサイトを覗くような怖さがあります。アニメの『serial experiments lain』でネットワークの裏側を見ちゃったような怖さ、がイメージしやすいですかね(?)


「このアングラ感をSNSが浸透した2010年代に適用したら?」を描いたような内容がこの漫画です。インターネットと現実とがより近くのように感じるようになった社会。SNSでの発言は現実に影響を与えやすくなってきたわけで…


ネの國の雲 (ガムコミックスプラス)

ネの國の雲 (ガムコミックスプラス)


漫画は5編の短編からなっています。それぞれ独立したストーリーですが、どのストーリーにも女子学生の「丑乃刻さだめ(うしのこくさだめ)」が、"ネの國"との調停役として登場します。

ファイル_01:ナナシノカレシ

とある女子学生が友達から紹介してもらった裏掲示板に恋愛相談を書き込んだところ、炎上します。レスには「名無しのカレシ」に関する呪文が書かれ…


インターネットのコミュニティ上には「匿名の不特定多数という暴力」が裏に存在しています。その暴力の犠牲になったとしたら、行き場のない怨みがどこかに溜まっていそうなわけで。

ファイル_02:ナナシノデンパ

裏掲示板にとある女子学生のひどい写真が掲載された。その学生は報復に野良WiFiを経由して暴露レスを返したら、その対象相手が発火し…


誰かを攻撃するのであれば自分も攻撃されることも想定しなければいけない。匿名であったとしても攻撃される可能性は常にあります。それを忘れて調子にのると悲惨なことになりそうです。

ファイル_03:ナナシノジュヨウ

「名無しの女優」が出演したエロ動画は、その女優を自分の強く念じた女の子に姿を変えて再生できる動画だった。ただし、動画再生の途中で目を離すと呪い殺しにくるという制約があり…


危険だと分かっていてもそこにエロがあるのであれば試す。男の性欲って愚かだなーって思いますよね。性欲は油断を生みやすく、そして恨みも受けやすいです。

ファイル_04:ナナシノムラ

昔、とある惨劇によって地図上から消えた村があり、その村がネットワークを介して住宅街に来る話です。かつて村で行われた惨劇が、その住宅街で繰り返されようとして…


ただ、あるランドマークがあったというだけでターゲットとなった住宅街。理不尽に一方的に行われる殺戮はとても報われないですよね…

ファイル_05:ナナシノキオク

「カゲ無し」の写ったある海岸の写真がSNSに投稿された。その海岸の近くに住んでいたことがある女子学生が、その写真を撮りに行くことになり…


幼少期に地元で交友のあった人はどうなっているだろうか。忘れた頃に偶然に出会ったとしたならば、警戒した方が良いかもね。そんな話でした。

SNSの行き着く先は相互監視社会『ディス魔トピア』

間違った方向に進んだ高度情報化社会って、なぜか心踊りますよね。


お互いがお互いを監視しあう近未来社会を描いた漫画が里好さんの『ディス魔トピア』です。タイトルから察する通り、ディストピアのジャンルに分類されるような内容です。


舞台は「キズナトピア」というSNSが浸透した街。隔離されたその街にはいたるところに監視カメラが設置されており、そのカメラの映像はキズナトピアを通じて見ることができる。街が隔離されているのはとある伝染病が流行ったため。保護地区としてこの街が造られ、健康な人はこの街に隔離された。


街の外からすると汚染されていない健全な身体が重宝されており、その身体を求めて「人狩り」が行われている。キズナトピアに捕獲対象の人物が提示され、市民はその人物の目撃情報をキズナトピアに報告することができる。地警は目撃情報を元に人狩りを行う。その人狩りを駆除する魔女の存在が噂されるが、キズナトピアでは魔女の存在は検知されず…が導入部分です。


主人公は姉妹の「エナ」と「ヤヤコ」です。一巻の表紙がエナ、二巻の表紙がヤヤコです。見た目に反してとても過激なことをするので「いろんな意味で大丈夫か?」いう不安も感じたりします。耐性のない人は注意ですね。




「相互監視社会」という基盤に胸が熱くなります。監視社会をテーマにした物語は、独裁者のような一部の権力者が市民を監視する、という内容が多いと思います。市民の一人一人がお互いを監視しあう、そんな社会を描いた作品は珍しいのではないかと思います。


この相互監視社会が成り立った経緯も面白いです。簡単にいうと、ある特別な素体が隔離された街に逃げたため、その街にいる人を利用してその素体を探そう。ついでに研究のために健全な身体も調達しよう。そんな個人の欲望で相互監視社会が生まれます。社会が間違った方向に進む要因は、きっと一部のマニアの純愛が裏にあるんじゃないかな。


そして、相互監視社会の時代が来そうな気がしてならないです。今はTwitterFacebookなどで、特定のキーワードがリアルタイムで報告される時代です。IoT(モノのインターネット)の分野もこれから発展していくので、監視カメラの映像や車の位置情報なども各個人が閲覧できるようなシステムが構築されていくと思います。そんな社会にこれからなっていきそうですが、果たして秩序を維持していられるだろうか…


監視社会を描いた作品といえば:
minor.hatenablog.com

人の思い込みって怖いよね『惨劇アルバム』

とある家族(辺野古家)に起こった惨劇を描いたホラー小説が小林泰三さんの『惨劇アルバム』です。父、母、娘、息子、祖父の5人を主役にした5編の短編に序章・終章が加わった構成です。


「人の思い込みの怖さ」というのが短編で共通したテーマとしてあると感じました。例えば母が主役の物語では「少しでもタバコの煙を吸ったら汚染される」という思い込みで理解のしがたい行動をしたりします。


思い込みの強さに起因する行動は、第三者から見れば狂気に感じることもある。『惨劇アルバム』はそんな怖さを堪能できる小説でした。


惨劇アルバム (光文社文庫)

惨劇アルバム (光文社文庫)


各章で主役となる辺野古家の人は次のようになります。

主役
序章 娘 (美咲)
幸福の眺望 娘 (美咲)
清浄な心象 母 (七奈)
公平な情景 息子 (福)
正義の場面 祖父
救出の幻影 父 (迩)
終章 娘 (美咲)
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