生きることは可能だけど、そこで生き続けることに耐えられるかどうか…そんな状況に置かれる小説が小川一水さんの『老ヴォールの惑星』です。
この小説は4編の短編で構成されています。地下の迷宮、海水に覆われた惑星など、様々な絶望的な環境・状況が舞台になります。どの短編もそんな絶望に抗うような内容になっています。
絶望的な状況であっても、大切な何かを守るために抗うのであれば、そこに一筋の希望が宿るとに思います。『老ヴォールの惑星』はその希望の美しさを体感できる小説でした。
- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/11/15
- メディア: Kindle版
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以下は各短編の内容と読んだ感想です。
ギャルナフカの迷宮
犯罪を犯した(とされる)人が地下の迷宮に投獄される話です。投獄される前に渡されたのは水と食料が示された地図だけ。広大な迷宮には同じ境遇の人がたくさんいて…
絶望的な環境の中で抗う描写が素敵です。劣悪な環境であっても人間性を失わなければ救われる可能性がある、そんなことを感じます。人間は一人では生きていけないことを再認識する話です。
老ヴォールの惑星
熱風の惑星「サラーハ」に誕生した生命体達の物語です。あるとき、数万日後にサラーハの生命体達を壊滅させるほどの巨大な天体が衝突することが分かり…
絶命が不可避な状況に追い込まれたとき、生命体は一番大切なモノを死守するために行動します。その行動にとても心に響く何かを感じるはずです。記憶を紡ぐような話です。
幸せになる箱庭
人類は木星から資源を調達している機械を発見した。このまま資源調達が行われ続けると地球の軌道に影響を及ぼしてしまうため、その機械を作った主に資源調達の中止を要求するためにコンタクトします。
人類よりも高度な科学技術を持った知的生命体と出会ったのであれば、人類はその知的生命体の手の上でただ遊んでいるだけになるのだろうなぁ…そんな話でした。
漂った男
海水に覆われた惑星に墜落し、救助を待つ男の話です。海水には生命を維持できるだけの栄養が含まれているため、いつ来るとも分からない救助をずっと待つことができるわけで…
人は、孤独な環境であっても、いずれは適応できる生き物だと思います。住めば都、けれどもよりよい環境はきっとあるので、それを探求することを怠ってはいけないですね。