マイナー・マイナー

隠れた名作の発掘が生きがい。

『機械仕掛けのメルディーナ』巨大な機械と北欧美女という至高の組み合わせ

機械大好き。人間嫌い。


ただし美少女!が登場する漫画が宮ちひろさんの『機械仕掛けのメルディーナ』です。スチームパンク感の漂うSFです。2巻完結。


舞台は機械技術が発展したロシアの風土を感じる街。そこに住む「メルディーナ」は機械の処分場で大きな機械を見つけます。その機械を修理し「マキーナ」という名前を付けて一緒に暮らし始めます。


物語は3人の登場人物を中心に進みます。


メルディーナ
本編の主人公(1巻の表紙の女性)。機械工学博士の娘。両親を事故で亡くしたことによって機械にしか心を開けなくなってしまう。


アリサ
メルディーナと友達になりたい少女。メルディーナに機械のぬいぐるみを修理してもらったりなど、お礼をしたいけれど門前払いされる。


ルカ
「んふー」の女性。街の巡査。国家の暗部のような組織と関わりがある。メルディーナの秘密を知っており、それ絡みで大変なことをしようとする。


アリサがメルディーナに歩み寄っては拒絶され…の繰り返しにもどかしさを感じる物語です。ですが、そのもどかしさを耐えた先には、素敵な何かがありそうなわけで。




人間の言葉を理解し、自律走行する機械。そういう機械も近々登場すると思いますが、そこにロシアンテイストが加わるとスチームパンク感が出てきます。そんなロシアのような風土でしか生まれないような機械っていいですよね。


ロシアといえば列車(シベリア鉄道)や人工衛星スプートニク)が思い浮かびます。それらに連想される「頑強さ」を持ったような機械には何か惹かれるものがあります。そして、そんな「頑強さ」を持った機械と北欧の美少女が出会ったのであれば、もうそれだけで絵になりますよ。


物語は、機械と人との関わりが深くなった社会主義国家が背景にあり、その国家の行く先を見届けるような内容でした。最後の方で「機械仕掛け」のベールが明かされるんですけれども、これが胸熱の展開でした。究極の社会主義を始めるのも終えるのも、結局は人間の感情なのだろうなぁ…

SaaSアプリを構築する前に『The Twelve-Factor App』を知っておけば良かった…

クラウドエンジニアを目指すのであれば『The Twelve-Factor App (12 Factor App)』を知っておかなければ恥をかくんじゃないかな…


『The Twelve-Factor App』はPaaSで有名な企業「Heroku」の人が書いたWebアプリのビルド&デプロイの方法論です。SaaSアプリケーション開発のための原則が12個にまとまっています。内容は下記リンクに詳細に書いてあります。


12factor.net


少し前に『The Twelve-Factor App』を知らずにクラウドサービスを利用したシステムの新規構築を行ったのですが、構築前にこれを知っておけばもっと保守性の高いシステムになったんじゃないかと思います。反省点がいっぱいですよ。


同じ失敗をしないために、ここに『The Twelve-Factor App』の要点と所感をメモします。

  • I. コードベース
  • II. 依存関係
  • III. 設定
  • IV. バックエンドサービス
  • V. ビルド、リリース、実行
  • VI. プロセス
  • VII. ポートバインディング
  • VIII. 並行性
  • IX. 廃棄容易性
  • X. 開発/本番一致
  • XI. ログ
  • XII. 管理プロセス
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『黒街』最終回に煮え切らなさを感じるブラック(バイト)ユーモア

ゾンビ、怪物、邪神…そんな怪異が徐々に街にあふれてくる漫画が小池ノクトさんの漫画『黒街』です。ブラック(バイト)ユーモアあふれる話が面白いです。3巻完結。


主人公は高校生の「幸一」。父と二人で「黒街」で暮らしており、ある理由により学校をサボっています。そんな彼の元にさまざまな怪異が起こり始めます。


物語は父の再就職先の話から始まります。毎日くたびれた様子で帰ってくる父の姿を見て「職場はブラックなのかな?」と思っていたら本当にブラックだったという話です。その後、転々と職場を変えるのですが、やっぱりブラックという展開が続きます。


途中から学校の話も混ざり始めます。邪神部(という部活)の「小早川英子」と出会い、こんな状況はさすがにおかしいということで、怪異の真相を明らかにしようと行動します。


黒街 2 (少年チャンピオンコミックス・タップ!)

黒街 2 (少年チャンピオンコミックス・タップ!)

1巻の表紙は怖いので2巻を載せました


つくづく思うんですけど、ギャグとホラーは紙一重なんですよね。『黒街』はギャグとホラーを合わせ持っているのが特徴的なのですが、最初はギャグだと感じた話もよくよく考えると怖いぜこれ、なこともあります。ギャグとホラーが重ね合わさった奇妙な世界観が素敵です。


また、街の住人がだんだんと壊れていく、小さな怪異がだんだんと大きくなっていくという展開も面白い要素のひとつです。今日起こった怪異が翌日には普通に扱われる…そんなことを繰り返していたら大変なことになるの必至です。伊藤潤二さんの漫画『うずまき』に似ているように思いました。


そして、物語の最後の方で明かされる真相に衝撃を受け、終わり方に煮え切らなさを感じます。怪異の真相が(うすうす)分かっていたとしても受け入れられない感情というのがありますよね。後味が良いやら悪いやらな最終回でした。

『放課後カタストロフィ』オカルトがそろいもそろって滅亡活動

恐怖の大王、イルミナティ、魔術教団…


そんなオカルトな存在がわちゃわちゃと集まる漫画が『放課後カタストロフィ -Re:THE END of the end-』です。原作は猪原賽さん、作画は平尾リョウさんです。3巻完結。


「1999年7の月に恐怖の大王が現れる」と予言したことで有名なノストラダムス。その子孫「九十九シトネ」がこの漫画の主人公です。舞台は予言が外れてしばらく経った2015年。


九十九シトネはある理由からオカルトを嫌っています。そんな彼の元に「恐怖の大王」が降ってきます。遅れてやってきた理由は寝坊したから。じゃあ早速人類を滅亡させよう、と張り切って行動する「恐怖の大王」を九十九シトネが止めようとする…というのが物語の導入です。


テンションが楽しい系のギャグ漫画ってときどき読みたくなりますよね。そんな欲望を叶えてくれる漫画だと思います。オカルトによって人類は滅亡しかけますが、ご都合主義的な何かが働いて滅亡を回避する、そんなパターンが繰り返されます。小さな悩みとか吹き飛んでいくような内容ですよ。


放課後カタストロフィ1(ヒーローズコミックス)

放課後カタストロフィ1(ヒーローズコミックス)


以下、この漫画で登場するオカルト達のメモです。ネタバレ注意。

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『因業探偵~新藤礼都の事件簿~』論理的思考で弄ぶ快感!

圧倒的な論理的思考ができるのであれば、人を追い込むことも容易いわけで。


論理や理屈をうまく操って事件の関係者を弄ぶ小説が小林泰三さんの小説『因業探偵~新藤礼都の事件簿~』です。『密室・殺人』に登場した女性「新藤礼都(しんどうれつ)」が主人公の小説です。


ただ面白いから論理で追い込む。最高潮の時に突き落とせば面白いので、最高潮になるよう計画を実行して然るべきタイミングで突き落とす。この小説はそんな性格を持つ女性が主人公です。その独壇場が面白いです。


因業探偵?新藤礼都の事件簿? (光文社文庫)

因業探偵?新藤礼都の事件簿? (光文社文庫)


本書はプロローグと6つの短編から構成されています。

プロローグ

新藤礼都は、過去に怒った殺人事件を簡単に解決できた経験から探偵を始めようとします。そのためにまずはお金を貯める必要がある、というわけでアルバイトを始めます。

保育補助

「左小路(ひだりこうじあまこ)」は「丸屋敷慶子(まるやしきけいこ)」が園長を勤める24時間営業の保育施設で働き始めます。そこには、とある理由により、新藤礼都がすでに働いています…


新藤礼都は幼児が泣いている理由を分析し、その分析に応じた対応を淡々と行います。アプローチとしては間違ってはいないですが、その行為にはなぜか人間味が欠如していると思ってしまいがちですよね。痛快な追い込みが行われる話。

剪定

「田沢(たざわ)」が公園で弁当を食べていたら、新藤礼都の剪定作業に驚いて弁当をこぼします。その弁当の片付けを田沢に要求する管理人「西田多紀郎(にしだたきろう)」と、その要求に反対する老人「九度山(くどやま)」が言い争います…


論理が矛盾する会話を平然と行う人が中にはいます。そして、その矛盾を指摘しても頑なに受け入れない人も中にはいます。そんな相手を新藤礼都が弄びます。やっぱり痛快。

散歩代行

新藤礼都が犬の散歩を代行する仕事をする話です。その犬「チビ」は殺人事件の犯人を目撃しており、チビの視線に気づいた犯人がチビを始末しようと追いかけてきます…


散歩する側からすれば、突然、よく分からず犯人に殺されそうになります。そんな状況であっても冷静に分析してうまく対応するのが新藤礼都です。異常な状況をすんなり受け入れられる人ってすごい。

家庭教師

「本郷忠介(ほんごうただすけ)」は息子「広重(ひろしげ)」が誘拐された、という内容の手紙郵便受けで見つけます。忠介は、広重の友達である「蔵山豪(くらやまたけし)」の家に訪れ、その母「茂子(しげこ)」に心当たりがないか尋ねます…


世の中には状況を把握し、思いのままにかき乱す天才がいます。そのひとりがまさしく新藤礼都です。誘拐事件をかき乱すだけかき乱してただ自分だけが楽しむ、関係者からするとたまったもんじゃないです。

パチプロ

「桐谷吾郎(きりたにごろう)」はある理由で「仙堂幸実(せんどうゆきみ)」に追いかけられ、パチンコ屋に逃げ込みます。そして新藤礼都とぶつかり、持っていたパチンコ玉をこぼします。


賠償請求はきっちりとする、それが新藤礼都です。そして、相手に何かしら後ろめたいことがあるのであれば、それをとことん追及したりもします。敵に回したくないですよ。

後妻

ある老人と結婚した妻は、老人を早く死亡させて財産を得ようと画策します。計画した内容は、夫が健康にならないように味の濃い料理を作り続けて食べさせることだった…


陰謀を感じさせずに淡々と長期計画を実行できる女性、それが新藤礼都です。限られた条件で最大の利益となるように行動できる人間ほどれほどいるだろう。そんな人間はきっと圧倒的な論理的思考と執拗さを持っているのだろうなぁ…


関連:
minor.hatenablog.com