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論理的思考ができない人におすすめ『ロジカル・シンキング Best solution』

論理的思考(ロジカルシンキング)ができなくて、震える…


最近はシステム開発の仕事で要件定義ばっかりやっていますが、要件をうまくまとめられないことに悩んでます。漏れがあったり重複があったり、同じような会話を何度も繰り返して結局結論が出ず…なんてことが多々あります。経験が足りないというのもありますが、そもそも論理的思考ができていないんじゃないかなー。


そんなわけで、論理的思考を鍛えるための情報を調べていたら『ロジカル・シンキング Best solution』を見つけました。Amazonで高評価だったので買って読んでみたら、実用性のある内容に満足しました。社会人になる前に読んでおきたかった参考書です。


ロジカル・シンキング Best solution

ロジカル・シンキング Best solution


本書は大きく3部構成となっています。以下は要点のメモです。

第1部 書いたり話したりする前に

人に何かを伝えるときには … 必ず課題(テーマ)と相手に期待する反応を確認しよう。


これ、コミュニケーションの基本だと思いました。テーマを意識していないと話が脱線した時に本線に戻せないです。また、相手に期待する反応(ゴール)が分かっていないと、そのテーマに対する議論が終わったかどうか判断できないです。この基本、守りたいです。


また、第1部でとりわけぐさっときたのは次の一文です。

「状況に応じて」「場合によっては」に要注意。付帯条件は同床異夢の温床。


少しでも例外がありそうであれば「場合によっては」と逃げる癖があります。けれども精度が要求される会話ではこの「場合」を言及されることが多いように思います。場合や状況を明確にすることを意識して実行するだけで、物事はより正確に伝えられそうです。

第2部 論理的に思考を整理する技術

論理的に思考を整理するための技術である「MECE(ミッシー)」と「So What? / Why So?」が書かれています。この2つの技術は、思考の整理だけでなく、作成した資料や記事のチェックにも有用だと思います。

MECE

ある事柄や概念を、重なりなく、しかも全体として漏れのない部分の集まりで捉えること。
Mutually Exclusive Collectively Exhaustive … 相互に重なりなく、漏れがない


課題に対する結論とその根拠を集合として捉え、その集合に重なりや漏れがないことが人を納得させることに繋がる、と理解しました。重なりがあれば混乱しますし、漏れがあれば説得力が無くなります。

So What? / Why So?

So What?
手持ちのネタ全体、もしくはグルーピングされたものの中から、課題に照らし出した時に言えることのエキスを抽出する作業。

Why So?:
So What?した要素の妥当性が、手持ちのネタ全体、もしくはグルーピングされた要素によって証明されることを検証する作業。


結論と根拠に辻褄があっているかを確かめる質問と捉えてもよいと思います。結論は「つまり〜だ」が言えなければならない。また、根拠は「なぜなら〜」が言えなければならない。双方に矛盾がなければ説得力が増します。

第3部 論理的に構成する技術

結論と根拠の部品を作る技術「MECE」「So What? / Why So?」を応用し、相手を納得させるための論理を構成する技術について書かれています。結論と根拠で「並列型」と「解説型」の論理階層を作る技術を学びます。

並列型

ひとつの結論に対して複数の根拠が並ぶ階層です。例えば「現状」と「その要因」を並べるような構成です。相手に対して現状を納得させた上で、その現状になった要因を説明する。体系的な共通理解が得られやすい論理階層だと思います。

解説型

ひとつの結論に対して「事実」「判断基準」「判断内容」を並べる階層です。ある課題に対して結論は複数ありえます。その中で選んだひとつの結論に対し、なぜその結論を選んだかを具体的に説明するための論理階層です。理由に焦点を当てたいときに有用な論理階層だと思います。

漫画版『Ever17』がものすごく良いところで終わる件

そういえば、2017年ってEver17の年じゃないか!


というのを2017年が終わる2ヶ月前に気づきました。これに気づけなかったの、ファンとして情けない…


Ever17 -the out of infinity-』は2002年にKIDから発売されたアドベンチャーゲームです。2017年に存在する海洋テーマパークにある事故が起こり、そのテーマパークに閉じ込められた男女が脱出しようとする、というゲームです。


謎解き×脱出×ループのゲームであり、これらの要素が好きな人ならば心を奪われると思います。様々に散りばめられた謎がクライマックスで収束する展開がすごすぎるのです。プレイ後はシナリオの素晴らしさに放心すると思います。


Ever17は個人的には『AIR』『STEINS; GATE』に並ぶ神ゲー(&泣きゲー)だと思っています。つまり、プレイしていないと人生を損している言えるレベルのゲームです。*1


このゲームはPS2Xbox360等でプレイできます。2014年までApp Storeでも配信されていたんですけれど、2017年現在は配信停止中のようです。プレイしたいと思ってもプレイしにくくなってきています…


Ever17のあの感動をもう一度感じたい。。そう思っていたらEver17の漫画があるじゃないか!というわけで買いましたよ、漫画版『Ever17』。


Ever17(1) (ファミ通クリアコミックス)

Ever17(1) (ファミ通クリアコミックス)


ゲーム自体はマルチエンディングで、何周かプレイしてやっと真実が明らかになるエンディング(ココ編エンド)にたどり着くような構成となっています。このココ編エンドを求めて漫画を買ったのですが、ココ編エンドじゃなかったー。


ココ編エンドとそこに至る怒涛の展開をもう一度復習できれば良い…そう思って読んだのですが、違うエンディングだったかー。ココ編エンドにつながる重要なエンドで漫画は終わってましたよ(あの「アルキメデスの原理」を利用するやつ)。


漫画の続編は出ないですかね。それかApp Storeで再配信されないかなー。出たら即買いするのに。。

*1:個人の感想です

無職でも生きていけるだけのお金と年齢の関係をざっくり出しました

30歳男性が生涯未婚で80歳まで生きるとしたら、約1億5000万円必要。


そんな記事を見つけて「おおっ!」となっています。30歳で1億5000万円の貯金は難しいけれど、この試算であれば40歳、50歳くらいであればセミリタイアもできるんじゃないか?


気になったので、この試算から無職でも生きていけるだけの年齢とお金の関係を調べました。


※ 傾向を掴みたいだけのざっくりとした調査です。保険料の支払いや国民年金の受給などを考慮していないことに注意。

試算式

生涯未婚で80歳まで生きるとし、

(1) 30歳なら1億5000万円かかる
(2) 80歳なら0円かかる

と仮定します。すると、(1)(2)より次の式が得られます。

必要なお金(万円) = -300 × 年齢 + 24000

試算結果

試算式をグラフにプロットしました。


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無職でも生きていけるだけのお金は次の通りとなりました。

  • 40歳で1億2000万円
  • 50歳で9000万円
  • 60歳で6000万円
  • 70歳で3000万円

65歳から年金が受け取れると仮定すると、60歳で3000万円くらいの貯金があれば60歳でセミリタイアしても良さそうです。ただ、30年後は年金制度が破綻、かつ、長寿化していそうだから、70歳までは無職になれないかなー…(世知辛い


引用元記事:
www.bengo4.com

『有害都市』表現の自由が規制される…そんな社会になりそうですよね

表現の自由ってなんでしょうね。


そんな疑問を考えさせられる漫画が筒井哲也さんの『有害都市』です。全2巻。


舞台は2020年の東京オリンピックが目前となった日本。不適切と判断されたものを排斥する運動が活発になり始めます。漫画家の主人公はそんな状況下でゾンビをテーマにしたようなホラー漫画を連載し始めます。


この物語では健全図書法が登場します。有害図書の指定基準を全国一律にし、有害図書を全国の書店から一掃するための法案です。有害図書の選定は著名人・学識経験者から構成される「有識者会議」によって行われます。


創作物の規制を考えた時、規制するところを間違えると大変なことになりそうです。創作物は、それを「作る人」と「見る人」がいます。作る人→創作物→見る人の流れを考えた時、作る人→創作物に規制をかけると窮屈になりそうです。


作る人→創作物への規制

このフローに規制をかけるのはどうかと思います。日本国憲法第21条の「表現の自由」で保証されているのはここだと思っています。


創作物の規制に関する議論がされると「有害と判定された創作物を作った人=悪」みたいな空気を感じることがあります。こういう空気が「有害な創作物を作る人は創作しないで欲しい」という考えを生み出し、ひいては「有害な創作物は作らないで欲しい」という考えに行き着くんじゃないかと思います。


『有害都市』では作る人を糾弾する空気を強く感じました。有害図書を作った人を有害作家と認定し、そして有害作家に対して「矯正プログラム」受講という行政処分が下される…表現の自由を抑圧するような制裁に問題を感じます。

創作物→見る人への規制

このフローに関しては規制をかけても良いと個人的には思います。「成長を阻害する可能性があるから」という理由ではなくて、ある条件を満たさないと閲覧できないという権限を明確にするためです。


重要度の高い情報は、それを適切に利用できる人にのみ開示できるようにすべきという要求が社会にはあると思っています。例えば、企業の重要な内部情報は外に流出すると株価に影響を与える可能性があるので、全従業員には知らせず責任を取れる人だけが知っているべきです。


ただ、創作物に関しては「何が重要か?」を示すのが難しいので、それが規制のやりにくさにつながっているように思います。創作物に関しては「有害 / 無害」が重要であるように思いますが、その線引きが難しいので、規制はやりにくそうです。


『有害都市』では13人の代表者による有識者会議で創作物が有害かどうかの規制を判断をしています。例えば、「高校生の妹が実の兄に恋慕の感情を抱く、ヒロインが13歳相当に見える → 不健全だ!」という具合にです。こんな判断で規制をかけて良いのだろうか…そんな課題を残していきました。

構成の巧妙さに身震いする『鏡の中は日曜日』

散りばめられた謎が一気につながる構成って良いですよねー。


構成に魅せられる小説が殊能将之さんの小説『鏡の中は日曜日』です。石動戯作(いするぎぎさく)シリーズの第3作目です。本小説には表題の「鏡の中は日曜日」と「樒 / 榁(しきみ / むろ)」が収録されています。


視点や話題がよく切り替わるので混乱しやすいと思いますが、実は単純な真実だったりします。逆にいうと、単純な真実を騙すことに特化して文章が構成されています。構成の芸術とでもいうんでしょうか。


また、ミスリードに次ぐミスリードも体感できる小説だと思います。一つのミスリードが明らかになって落ち着いたと思ったら実はまだミスリードがある…そんな構成がすごいです。二重三重に騙されますよ。


鏡の中は日曜日

14年前、鎌倉にある法螺貝をイメージした館「梵貝荘(ぼんばいそう)」で殺人が起こります。事件は当時その現場にいた探偵によって解決されたが、この解決に疑問を持った人物は名探偵の石動戯作に事件の再調査を依頼します。


断片的な情報が一気につがなるというすごさと面白さを感じました。三章からなる物語なのですが、第一章と第二章はパズルのピースを一つずつ確認していき、第三章でパズルが一気に組み上がる…巧妙に仕組まれた構成に惚れ惚れします。


また、作者の文学好きが伝わってくる内容でもありました。フランスの詩人「マラルメ」をテーマに議論が白熱するシーンがありますが、それが濃いです。濃い議論を描写するための尽力をひしひしと感じます。


サブタイトルは「Im Spiegel ist Sonntag」で、フランス語が出てくるのでフランス語かなと思ったらドイツ語でした。Spiegelが鏡でSonntagが日曜日です。

樒 / 榁

樒と榁の二章で構成されています。舞台は香川県にあるとある旅館。樒の章ではその旅館で密室殺人が起こります。榁の章では、密室殺人から16年後を描いており、同じ旅館で密室が起きます。

しきみ【樒】 シキミ科の常緑小高木。全体に香毛があり有毒で、果実は特に毒性が強い。枝葉を仏前や墓前に供する。語源は「悪しき実」からとも。

むろ【榁】 杜松の古名。
ねず【杜松】 ヒノキ科の常緑小高木。葉は針状で三本ずつ輪生する。紫黒色の球果から油を製し、利尿薬とする。和名は「ねずみさし」の略で、尖った葉が鼠を追い払うとされることから。


樒の事件が榁の事件に関わってくるのですが、その関わりが面白いです。樒なくして榁ができない…そんなトリックに惚れ惚れします。ちなみに、両方の漢字から部首のきへんをとると「密室」という言葉が現れてきます。このセンス、良いですよねー。


石動戯作シリーズ
minor.hatenablog.com

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