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隠れた名作の発掘が生きがい。

豪華すぎない?SF名手が集まった『BLAME! THE ANTHOLOGY』


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九岡望小川一水、野崎まど、酉島伝法、飛浩隆


弐瓶勉さんの漫画『BLAME!』のアンソロジー小説『BLAME! THE ANTHOLOGY』を手がけている小説家のリストですが、SF好きであれば見たことのある作者が並んでいると思います。もうね、一目見て思いましたよ。このアンソロジー、豪華すぎだろ!


BLAME!』はSF漫画の金字塔だとずっと心の中で思っていたのですが、このそうそうたる作者達がアンソロジーの企画に参加するのを見て、この思いは間違いではなかったと胸を張って言うことができますよ。『BLAME!』の影響力のすごさをこの一冊に感じます。


アンソロジーの内容も『BLAME!』愛をひしひしと感じる内容でした。巨大な階層都市の一部分の話をする内容もあれば、全体を語る話もありました。 SF名手達が描くそれぞれの『BLAME!』を堪能しました。


BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)

BLAME! THE ANTHOLOGY (ハヤカワ文庫JA)

はぐれ者のブルー (九岡望)

電基漁師の「鈍丸(にびまる)」が食糧を探しに出かけたら、珍しい珪素生物「アグラ」と出会った話です。鈍丸は青の塗料を積極的に探すのですが、それにはとある理由があります。


いろんな性格の人がいるように、いろんな珪素生物もいます。中には人間に友好的な珪素生物もいるはず。そんな珪素生物と人間が出会ったなら、という内容でした。オチがいいね!

破綻円盤 —Disc Crash— (小川一水)

とあるお休み処「碧天軒」で働いている珪素生命「ルーラベルチ」のもとに、検温者「夷澱(イオリ)」がやってきます。夷澱は温度データを集めているのですが…


BLAME!の都市階層は巨大すぎるので、地球や太陽といった惑星、恒星がどうなっているのか、一度は気になったかと思います。この短編は恒星と都市階層の構成がどうなっているかを探査するような内容です。よく練られた設定がすごいです。

乱暴な安全装置 —涙の接続者支援箱— (野崎まど)

ネットスフィアへの接続を支援する「接続者支援箱(カスタマーサポートボックス)」をめぐる話です。放蕩者の「ニウ−レスキ」が見つけた白い塊の正体を調べていたら、ある陰謀に行き着きます。


ネットであるならハッキングもできそうではあるけれど、未だに都市機能が回復していないところを見ると、ネットスフィアのセキュリティはとてつもなく強固そうです。どうあがいても手に負えない、そんな無常を感じる内容です。

堕天の塔 (西島伝法)

階層都市の連続体を一直線に穿つ「大陥穽(だいかんせい)」。その中を、統治局の代理構成体「ホミサルガ」を含む数十名が落ち続ける話です。


無限とも思える時間、落下し続ける…巨大すぎる階層都市だからこそ映える設定だと思います。無常とも思える長さを表した一節にすごく胸がときめきました。

これまでどれだけ落ちてきたのだろう。これからどこまで落ちていくのだろう。

射線 (飛浩隆)

「環境調和機連合知性体」の話です。この知性体は巨大な階層都市を構成する表面が知性を獲得したような存在です。エアコンのような環境最適化機能が都市の構成要素になっていて、その構成要素に自我があるような、そんな知性体です。(うまく表現できている自信がない…)


読み終わった後の第一声は「これ…すごい…」です。誰も思いつかないような知性体を登場させ、その知性体から見たら階層都市の歴史を語るような内容なのですが、SF心をくすぶるような緻密な描写に興奮しっぱなしです。何かの賞を受賞するんじゃないかな。。


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minor.hatenablog.com