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ゾンビトリック炸裂『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』


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ゾンビを殺すとしたら何か理由がある??


小林泰三さんの『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』はゾンビ×ミステリーな小説です。この組み合わせ、今まで見なかったなー。


舞台は活性化遺体(俗称:ゾンビ)が外を歩いているのが普通となった世界。

  • 人はゾンビに噛まれたらゾンビになる。
  • また、ゾンビに噛まれず死んだとしてもゾンビになる。
  • そんなゾンビを殺しても罪にならない。
  • でも、ゾンビになる前に殺したら罪になる。
  • ゾンビを食べるゾンビイーターがいる。

そんな世界が舞台です。


物語はとあるパーティーで密室殺人が起きるところから始まります。ゾンビ研究所の主幹研究員「葦土健介(あしどけんすけ)」が入った部屋から叫び声が聞こえてます。見に行ったら部屋の扉には鍵がかかっており、扉をこじ開けて入ったら葦土健介はゾンビになっていた。


主人公の私立探偵「八つ頭瑠璃(やつがしらるり)」とその助手「竹下優斗(たけしたゆうと)」は、研究所の執行役員「有狩一郎(うかりいちろう)」の犯人調査の依頼を受け、調査を始めます。調査を進めていくと、ゾンビに関していろんなことが分かり始めて…といった内容です。



我の強い会話がやっぱり面白いですよね。小林泰三節とでもいうのでしょうか。どちらかが妥協すれば先に進むのに…という会話がちらほらあります。例えばこんな会話。

「ちょっと待って。ここには論文や学会発表を纏めたゾンビ研究のデータベースがあるはずよね」
「いいえ。そんなものはありません」
「はいはい。いちいち七面倒くさいわね。……ここには論文や学会発表や特許を纏めた活性化遺体研究のデータベースがあるはずよね」
「ああ。それならばございます」


こんな会話、はっきりと物言いできない日本人にとってはスカッとしてたまらないんじゃないかと思います。実生活でこんな会話を続けていたら身がもたないですが。


もうひとつの見所はゾンビを利用したトリックです。ロジカルに考えれば解けるトリックだと思うのですが、先入観が邪魔して見出せないようなトリックです。


生者、死者、ゾンビの境界が曖昧になる、、『わざわざゾンビを殺す人間なんていない。』はそんな小説でした。