なんてタイトルだ!
小林泰三さんの小説『臓物大展覧会』は上級者向けホラー小説です。ホラーにもいろいろジャンルがありますけど、この小説はタイトルから察する方向のホラーです。
臓物と聞くとそれだけでうわーってなるのですが、生物にとっては大事なものを生成する部品でもあります。例えば肝臓は体内に入った有毒な物質を解毒するといった重要な役割を持った器官でもあります。
うわーってなるけれども実は重要な何かを示唆している、そんな物語を体感できるのが『臓物大展覧会』だと思います。本小説は9つの短編+プロローグ・エピローグの構成となっており、いろんな短編(臓物)を経験して最後に何かを得るといった流れになっています。
- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/11/29
- メディア: Kindle版
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うわーっな要素をときどき取り入れることは、きっと、有用な、はず!
短編リスト
透明女
身体の一部を切除して、そこを透明な部品と入れ替える…それを続けていけばいずれ透明になれる!というトンデモ理論を実行する女の話です。あまりにも内容がエグすぎて、モザイクなシーンは飛ばし飛ばし読みました。。小林泰三さんの小説の中で1、2を争うエグさじゃないかなぁ。
ホロ
幽霊(ホロ)が見えるシステムが普及した世界の話です。幽霊に心はあるかどうか、幽霊はどこに存在するか、そんな議論の行き着く先はトンデモない結果です。人間の記憶はいずれコンピュータで扱えるデータとなっていくと思いますが、取り扱い注意ですね。
少女、あるいは自動人形
招待された屋敷の中にはおびただしい数の人形があった…そこで自動人形(オートマータ)と触れ合う話です。
人間が不完全なオートマータだとしたら、オートマータとは完全な人間でなくてはならない
この一文がすごく良いです。人間がオートマータ(またはAIやアンドロイド)に望んでいることが完全性なのだとすると、オートマータこそが人間の理想とする行き着く先なのではないでしょうか。
攫われて
公園で遊んでいた三人がとある男に誘拐される話です。とある山の中の小屋に監禁されて、そこで誘拐犯にうわーなことをされます。現実的な話だけに、後味が。。。
釣り人
二人で釣りに行ったは良いものの、その日の記憶の一部が抜けていることに気づき、その真相を探る話です。キャッチ・アンド・リリースの精神の大切さを知る話。
SRP
科学捜査研究隊(SRP)に所属するユリコとブキチが怪事件の捜査をする話です。妖怪が出てきて、それに対処します。内容はコミカルですが、裏には熱いハードな設定があります。ΑΩを思い出します。
十番星
発見した十番星に翻弄される話です。地球にコンタクトできる知性体がいるのであれば、地球人より進化した生物ではないだろうか…侵略される怖さを感じます。
十番星は冥王星の次の星のことを示しています。丁寧にも次の注釈が書かれていました。
この作品の発表時、冥王星は太陽系第九惑星とされていました。現在惑星の数は八つとされています。
造られしもの
ロボットの普及した世界で、ロボットを乱暴に扱う男の話です。ロボットが人間らしさを見せたのであれば、同族嫌悪の感情が湧いてくるのだろうか。。
ロボットは完全な存在でなければならない。その完全性の行き着く先を見るような内容でした。
悪魔の不在証明
とある村に移り住んだ小説家と、最近村にやってきた宣教家(?)とが、神が存在するかどうかで口論する話です。神の不在を証明しようとしたらとんでもないことになります。
「悪魔の証明」をテーマにした内容です。世の中は、口の上手い人が勝つようにできている。