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人工生命体がより人間らしくなる『彼女は一人で歩くのか?』


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歩くのでしょう!


人間と人工生命体との関係に素敵なものを感じる小説が森博嗣さんの『彼女は一人で歩くのか? (Does She Walk Alone?)』です。Wシリーズの第1作目です。


人工細胞で作られた生命体「ウォーカロン(walk-alone)」。人間にそっくりで外見から見分けるのは難しい、そんな生命体と人間が共存している近未来の世界が舞台です。


人間とウォーカロンを識別する方法を研究していた「ハギリ」は、ある時何者かに命を狙われます。そんなハギリを保護するために「ウグイ」が現れて…が物語の導入です。


この小説で描かれる未来って、実現可能性の大きい未来のように感じるんですよね。長寿化と人工生命体、この2つが社会に浸透したのであれば、人間はどういった生き方を選択していけば良いのだろうか。


長寿化 = 人口減少

研究によって人間の寿命が大きく伸びます。寿命が伸びるということは子孫を残す必要も無くなってくるので少子化、人口減少に繋がります。


自分の好きなことに費やせる時間が増える一方で、人口は緩やかに減少していく。そんな現実をこの小説では描いているのですが、不思議とその現実が美しく感じるんですよね(森さんマジック)。

人工生命体はより人間らしく

人工知能は生活に普及してきているし、そう遠くない未来に一人で歩くアンドロイドが登場すると思います。しばらくは人間とアンドロイドの見分けがつくと思いますが、いずれはそれも解消されて人の五感だけでは区別できなくなります。


人間と人工生命体との区別ができなくなった時、両者の関係はどうなっていくのだろうか?その一つの解をこの小説で描いています。

よい終末を!

現代を生きている人の役目は、きっと人間よりも完全性を持った存在を創ることにあると思います。そして、その存在を創ったのであば、人類は衰退を余儀なくされます。それは摂理のように思います。


『彼女は一人で歩くのか?』は人類と新世代の入れ替わりの分岐点を見ているような物語でした。人類の終末につながるような物語なのですが、それは決して嫌ではなく、むしろ素敵に感じるんですよね(森さんマジック)。


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