暗黒を倒せば、次の暗黒…
そんな連鎖を描いた『勇者たち』がすごいです。浅野いにおさんの1巻完結の漫画です。
舞台は暗黒の潜む森。勇者たちが暗黒の魂にのっとられた仲間(トン助)を倒したところから物語は始まります。トン助の封印後、勇者たちは森から帰ろうとしますが、仲間の1人である「ハエの王」から帰る家がないことを告げられます。
そんなハエの王に気を使って「三杯酢」はみんなの家を勧めますが、今まで我慢してきたような不満が徐々に表れ、言い争いに発展します。その末に、ハエの王は三杯酢を殺めてしまいます。
多種多様なキャラクターによって繰り返し行われる暗黒討伐…その行く末に何かわだかまりが残ります。
特徴をいうと、登場人物が多彩で豊かです。例えば第1話の出演は下記の通りです。
- ゆめちゃん
- ウサ公
- プリンセス・ズベタ
- 三杯酢
- ややワニ
- チュニーキン
- ハエの王
- 文・春
- ブラパンダ
- ヤン・ツン・メン
- ネコUFO
- 山本
- やばいの
- J・スットコビッチ卿
多種多様であり、そして多様さが持つものと持たざるをものを目立たせています。
「敵がいるから仲間がいるのか、仲間がいるから敵がいるのか。分からなくなってきました。」
ロールプレイングゲームでは悪を倒せばその次に大きな悪が現れるという流れがよくあると思います。一方で『勇者たち』では、悪を倒すとその次に小さな悪が表面化する、という流れとなっています。これがとても面白いです。
不公平さがある限り、嫉妬や妬みはつきまといます。そして、嫉妬や妬みをそのままにしておくと、やがて暗黒に至る気がします。この漫画『勇者たち』はその縮図を描いたような内容のように思いました。