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思い込みが激しすぎる依頼人達に耐えられる?『安楽探偵』


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いくら日本語で意思疎通は取れるといっても、個人の持っている思考は様々なので、話が通じなかったりもしますよね。


中でも思い込みが激しい人とのコミュニケーションは厄介かと思います。その人から必要な情報を引き出したり、説得させたりするのは結構なスキルが必要です。


思い込みが激しい依頼人達を相手にする、そんな探偵を描いた小説が小林泰三さんの『安楽探偵』です。ミステリーの安楽椅子探偵(部屋から一歩も出ずに事件を解決する系)の分野に入る作品です。


基本的には、探偵の事務所に依頼人が訪ねてきて、その依頼人達の話を聞き、依頼を解決するという流れです。一話ごと完結で、全部で六話あります。


論理的で非の打ち所のない探偵と、一般的な論理が通じないような依頼人。そんな両者が出会って会話したならば、面白いことになるの必至ですよ。


安楽探偵 (光文社文庫)

安楽探偵 (光文社文庫)


第一話 アイドルストーカー

アイドルの「富士唯香(ふじゆいか)」がある男にストーキングされる話です。富士唯香の写真が雑誌に載ると、その写真を模倣した写真(被写体はストーカー)が富士唯香のもとに届けられます。


オチに「?」となりましたが、再度じっくり読み返すと「うへー」な真相が分かりました。思い込みの力に恐怖を感じる内容ですね。

第二話 消去法

会社員の「中村童子(なかむらとうこ)は、自分が「消えろ」と言った相手の存在を消すことができることに気づいた。能力を使って次々に人間を消していったが…な内容です。


奇妙なわだかまりの残る話です。妄想オチを回避したいのであれば、現実的に実現可能であることを示す必要がありますよね。

第三話 ダイエット

「戸山弾美(とやまはずみ)」は何も食べないのに太るという奇妙な現象に悩んでいた…という話です。まざまざなダイエット法を実践した結果がすごいです。


「思い込みが激しい」ということは逆にいうと「定義がはっきりとしている」と等価なことかもしれないと思いました。翻訳に苦労する話です。

第四話 食材

ある3人家族は持ち込んだ食材を料理してくれるレストランを訪れます。しかし、両親が料理に夢中になっている間に娘がいなくなっていることに気づきます。


導入からして嫌な予感しかしないです。娘がレストランから出た形跡がないのであれば、レストランの中で何かされたと考えるのが普通なわけで。。

第五話 命の軽さ

「伊達杏太郎(だてきょうたろう)」はある団体に給料3ヶ月分のお金を寄付します。その寄付金がどこに使われているかを調べてみたら…な話です。


お金の使い方は人それぞれです。どんな価値にお金を使うのかは人それぞれであって、その価値を他人が推し量るのは難しいという話でした。

第六話 モリアーティ

探偵の助手(らしい人)は、探偵が今までに解決した事件に違和感を感じます。依頼人から聞いた話からだけでは知ることのできないような情報を、探偵は知っているような振る舞いなわけで…


依頼人から聞いた情報だけで事件を解決するのは現実では無理だよなぁ、と思ってしまいます。それが実現できる可能性があるとすれば…な話でした。


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