11月18日(土)〜19日(日)の2日間で鳥取と倉吉に行ってきました。
経緯
鳥取砂丘でポケモンGoのイベントが11/18〜19にあるらしい!(噂)
↓
飛行機の往復便(40,000円)を旅割で予約。
↓
鳥取砂丘でポケモンGoのイベントが11/24〜26にある!(公式発表)
↓
キャンセルせねば!
↓
払い戻し手数料は運賃の30%(12,000円)
↓
( ゚д゚)
そんなわけで、何かの策略に見事にはまって、鳥取県に行ってきました。
名状し難いものがいる!
そんな漫画が諸星大二郎さんの漫画『BOX~箱の中に何かいる~』です。全3巻。
物語は主人公の多角光二の元に送り主が不明の「箱根細工(からくり箱)」が届くところから始まります。その箱根細工を解くと、同時に街に異変が起きます。気になるままに調べていくと入口のない立方体の建物を発見します。
その建物に同じくパズルを受け取った人たちが集合します。その内のひとりが持っていたパズルを解くと、突如として入口が現れます。どうやら各々の持っているパズルを解くと先に進める仕組みであると理解し、パズルを解き進めていきます。
集合した人たちが持っていたパズルは次の通りです。
登場人物 | パズル |
---|---|
多角光二 | 箱根細工 |
桝田恵 | ルービックキューブ |
甲田真一郎 | 開かない箱 |
谷寛一・八重子 | 迷路 |
山内誠 | クロスワード・パズル |
神宮智恵子 | 立体を転がすスマホアプリ |
これらのパズルを素直に解き進められれば良いですが、謎解きを邪魔する存在が現れて妨害してきたり、不可思議な現象で足止めされたりと、なかなかの困難が待ち受けます。アドベンチャー要素も強めです。
漫画家でしか描けないような謎がとても素敵でした。だまし絵をパズルにアレンジする創造力にすごさを感じます。また、ときどき各話の扉絵に読者向けのパズルが用意されていて、それが独特で面白いです。例えば「間違い探し」の逆「間違ってない探し」があります。
立方体って何かよく分からない魅力がありますよね。『BOX~箱の中に何かいる~』はそのよく分からない魅力を堪能できる物語だと思います。
団地が漂わせる奇妙な空気ってありますよね。そんな空気を体感できるジュブナイル × ミステリー小説が殊能将之さんの『子どもの王様』です。
舞台はとある団地。そこに住んでいる小学生のショウタは、同じ団地に住んでいる友達のトモヤから「子どもの王様」の 話を聞きます。子どもの王様は、子どもの国を支配していて、子どもを連れてきては召使いにする…というような話です。
その話を聞いてしばらくした後、ショウタは団地の近くで子どもの王様らしき人物を見つけます。そのことをトモヤに伝えると、トモヤの様子がおかしくなります。日常を取り戻すため、ショウタは子どもの王様と対峙します。
小学生の頃って、世界はどこかの異世界と接続されている感覚があったと思います。おとぎ話や怪談に登場するような生物が世界のどこかに存在している。そしてその存在の片鱗をときどき感じるような感覚です。
おそらくは、不思議なものを論理的に説明できる知識や経験がないために、不思議をそのまま受け入れる生物的な仕組みによるものと思います。そして、今体験していることと経験に不整合がある場合、素直な疑問になって表れます。
ひげを生やしているけど、子どもなんだ。怖いと思わない?
物語の節々に表れる、このような描写に素敵なものを感じます。舞台の団地が醸し出すような奇妙さが文面から伝わってきます。小学生時代を団地で過ごしていたという殊能将之さんの経験が織り込まれています。
大人の読者からみれば、序盤で「子どもの王様」の正体は予想がつくと思います。しかし、子供のショウタの視点からだとその正体に気づけないんですよね。それが読んでいて面白いところです。
そして、最後の展開は衝撃的でした。大人への階段を一歩進む物語、ととらえても良いのだろうか…
750年前に起きた死の謎、解ける?
そんなむちゃぶりの事件に挑む小説が殊能将之さんの『キマイラの新しい城』です。石動戯作(いするぎぎさく)シリーズの第4作目です。
舞台は千葉の山奥のファンタジーランドに再建された「シメール城」。この城は、750年前、中世のフランス北部にあった古城であり、稲妻卿「エドガー・ランペール」が城主であった。
シメール城を再建した会社の社長「江里陸夫(えさとりくお)」は稲妻卿の亡霊に取り憑かれます。そして、稲妻卿を殺したのが誰かわかるまで江里の肉体から成仏できない状態になります。
750年前に起きた稲妻卿の死の真相を探るべく、名探偵の石動戯作がシメール城に招待されます。そして、石動戯作は、関係者を集めて当時の状況を再現し、その密室殺人のような状況の真相を解き明かします。
ひと段落した後、稲妻卿が死んだ部屋で殺人事件が起きます。事件の主犯として疑われた稲妻卿は逃亡を試みます…
シメール城で起きた750年前の事件と現代の事件。2つの事件に共通する「密室」の真相を明らかにしていく内容なのですが、その真相に驚愕します。
先に750年前の事件の真相を追ったことのよってある先入観が読み手に埋め込まれます。その先入観が現代の密室の謎に大きく関わっているのですが、その謎がたった一言で明らかになる…その展開が一番の面白いところでした。
また、物語は多視点で書かれているのですが、稲妻卿の視点で書かれる文書も面白いです。750年前のフランスの城主が現代の日本を体感する表現が良いです。例えば次の表題。
稲妻卿がロポンギルスに入城し、異教の神殿をさまようこと
まるでロールプレイングゲームをプレイしているような、そんな表現のセンスに惚れ惚れします。『キマイラの新しい城』は、推理だけではないエンタテイメントさも強く感じられる小説でした。
石動戯作シリーズ:
minor.hatenablog.com
自分が現実だと思っている世界は本当の世界なのだろうか。本当の世界は別にあって、幻想を本当の世界だと思っているだけではないだろうか。
幻想と本当の世界が入り乱れる、そんな物語が詰め込まれた短編小説が小林泰三先生の『目を擦る女』です。全7編で構成されています。2017年10月31日に電子書籍で販売開始しました!
紙媒体の方では『目を擦る女』の後にそれを再編した『見晴らしのいい密室』という短編小説が出版されています。『見晴らしのいい密室』には『目を擦る女』の下記4編が収録されています。
この4編については、
説得力のある奇妙な論理展開が素敵『見晴らしのいい密室』 - マイナー・マイナー
でレビューしているので割愛します。ここでは『目を擦る女』でしか読めない残りの3編の感想を書きました。
宇宙空間に直径10kmの球状の物体が現れます。その物体が降り立った宇宙ステーションに向かうと、そこには人間の死体が転がっていた。残されていた記録を観ると、人から脳だけを取り出して食べる生物「脳喰い」が映っており…
脳は目に映る世界を現実と実感させることのできる重要な器官です。そんな重要な器官が意識のあるまま奪われたのであれば、奪われた人の現実は大変なことになりそうです。
空から風が落ちてくる世界の住人達の物語です。その世界では徐々に重力が衰退する現象が起こっており、近い未来に重力がなくなることが予想されていた。重力がなくなる日に備え、住人達は避難の準備に取り掛かります…
なぜ風は空から落ちてくるのか…その真実が明らかになったとき、熱いものを感じると思います。自分で観測できる範囲が世界の全てだとついつい思いがちですが、実は世界は想像以上に広大だったりします。
テレビをつけると「日本にエイリアンが現れたらしい」という情報が流れてきます。エイリアンを警戒するため、家の戸締りをしようと家を見て回ると、トイレで等身大の蚊を発見します…
人は牛を食べる、蚊は人の血を吸う…異生物とのコミュニケーションで明らかになる真実があります。その真実が人類の真理(神話)に接続する展開がすごく面白い物語でした。
小林泰三先生の小説まとめ:
minor.hatenablog.com