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隠れた名作の発掘が生きがい。

『春と盆暗』よく分からない妄想を理解する青春ストーリーが素敵


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モヤモヤしたら、月面に道路標識を放り投げるとか


いろんな妄想を人はするけれど、その妄想は他者から見たらよく分からないものだったりします。けれどもその妄想を理解できた時、お互いの距離が一歩近づけたような関係になったりします。


妄想を理解してお互いの関係が親密になる、そんな過程を楽しめた漫画が熊倉献さんの『春と盆暗』でした。本作は4作の短編+おまけの構成となっています。


とにかく妄想のセンスがすごかったです。月面に道路標識やケーキを巻き戻すなど、そんな発想よくできるなぁと…そして、そんな妄想たちにうまく対応するストーリー構成も秀逸で、もうセンスの塊を見ているような漫画でした。


春と盆暗 (アフタヌーンコミックス)

春と盆暗 (アフタヌーンコミックス)

第1話 月面と眼窩


…モヤモヤした時は月面を思い浮かべて そこに思いっきり 道路標識を放り投げるんです


とある青年が、お店のアルバイト(サヤマさん)に恋する話です。サヤマさんはイライラすると手をグーパーグーパーします。パーの時に何かを持たさせたい、そんな妄想にとらわれるのは僕だけではないはず。妄想を実行するかどうか、それが青春を楽しめる秘訣なのかもしれない。

第2話 水中都市と中央線


なんか 水面ギリギリで息してる人みたい


カラオケ店員の青年と女性客(水面ギリギリで息してる人みたい)の話です。女性客はカラオケの受付時に毎回違う名前を書くのですが、その名前には共通点があります。行動には何かしらの法則がある。その法則を知ることができればその人の魅力も分かる。そんな内容が素敵でした。

第3話 仙人掌使いの弟子


サボテン同好会のメンバー増やそうよ


14歳のススムくんが、はとこのさわ姉に勧められてサボテンをもらう話です。そして、学校のとある問題を解決しようとさわ姉の発想力を頼ります。お互いを知るためのきっかけはきっとどこかにあって、興味が強くなればなるほどそのきっかけは明確に現れる、人生にはそんなルールがあるような気がします。

第4話 甘党たちの荒野


このケーキ 巻き戻せませんかね?


景色を早送りする妄想にとらわれた男性と、ケーキを原材料まで巻き戻したい女性の話です。ケーキのことを良く知ればできるようになるかもしれない、そんな男性の返事で女性からお菓子作りを学ぶことになります。よく分からない問題をセンスのある回答で切り返す、そんな対応力を身に付けたいものです。

おまけ 二足獣


僕の父はサメ 母はオオカミ 人間そっくりな僕に人間の血は流れていない


そんな娘に惚れる人も世の中にはいるよね!人生は妄想の相互理解で成り立っている気がします。