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『兎が二匹』不老不死の寂しさ描写がつらい…つらすぎる…


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胸が張り裂けそうになる具合、すごい…


不老不死系の漫画を今までいくつか読んできましたけど、山うたさんの漫画『兎が二匹』は胸が張り裂けそうになる具合が群を抜いて一番ですね。。こんなにも不老不死系のせつない漫画があっただろうか?


不老不死の女性「稲葉すず(いなばすず)」
すずと同居している青年「宇佐美咲郎(うさみさくろう)」


すずは(ある理由により)咲郎に自分の自殺を手伝わせており、それが日課となっている描写で第1話が始まります。この第1話では、すずがある方法で死のうとして取り返しのつかない結果をもたらします。第2話からは回想が始まり、そして途中で第1話につながります。


不老不死というと、死ねないので、自分と親しい人が次々にこの世から去っていくという悲しさを描くことが多いと思います。けれども、不老不死は非現実感が強いので、今まで読んできた不老不死系キャラクターには感情移入がしにくい傾向にありました。


『兎が二匹』は登場人物の人間味が強く表れている、という特徴があります。不老不死のすずは、広島弁を話し、咲郎のためにご飯を作り、笑い、泣き…そんなわけで、知らぬうちにすごく感情移入してしまっていました。


そして、感情移入度が深くなった分、ラストの衝撃も強く受けるわけで…


兎は「寂しいと死ぬ」と言われている動物です。第1話のタイトルは「兎が二匹」、そして最終話のタイトルは「兎が一匹」…家で一人静かに読むの推奨です。


兎が二匹 1巻 (バンチコミックス)

兎が二匹 1巻 (バンチコミックス)


起承転結というよりも転起承結の構成となっているのも特徴的です。すずと咲郎に焦点を当てた時系列に直すと次のようになると思います。

  • 起:第2話
  • 承:第3話〜第7話前半
  • 転:第1話
  • 結:第7話後半〜第9話(最終話)


第1話を読んだだけだとすずと咲郎の関係がよく分からず「ん?」となるんですが、第2話からずっと読んでいくと咲郎に自殺を手伝わせている理由が深く分かって心を鷲掴みにされます。そんな状態で最終話へと向かうもんだからぐはぁってなりますよ、ええ。


人がたとえ不老不死になったとしても、もとは人なので寂しさを制御することは難しいんだろうなと思います。『兎が二匹』はそれを痛烈に感じた漫画でした。