異なる世界を行き来するファンタジー・ミステリー小説が小林泰三さんの『クララ殺し』です。『アリス殺し』の姉妹編です。
『アリス殺し』はルイス・キャロルの小説「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」を題材にした世界が登場しましたが、『クララ殺し』はE・T・A・ホフマンの小説「くるみ割り人形とねずみの王様」等が題材となった世界が登場します。
物語は「不思議の国のアリス」の世界にいたビルが「ホフマン宇宙」の世界に迷い込む描写で始まります。そして、その世界でビルはクララという少女と出会います。クララは殺人予告が書かれた手紙を受け取っており、その手紙を書いた犯人をビルが調査します。
「ホフマン宇宙」と「地球」の世界が物語の舞台です。設定を大まかにいうと次の通りです。
- ホフマン宇宙の登場人物は地球の誰かのアーヴァタール(化身)
- ホフマン宇宙の「ビル」は地球の「井森建」のアーヴァタール
- ホフマン宇宙で登場人物が死ぬと地球のアーヴァタールも死ぬ
- 地球でアーヴァタールが死んだとしても、ホフマン宇宙の登場人物は死なない
ホフマン宇宙と地球を行ったり来たりしながら物語は進みます。クララの殺人予告の謎を解く鍵は、ホフマン宇宙の登場人物と地球のアーヴァタールとがどのように対応しているか、にあるのですが、その対応を明らかにしていく過程がすごくおもしろいです。
「ホフマン宇宙のこの登場人物は地球のこの人なんじゃないか?」と推理しながら読んでいくんですが、ことごとく外れます。見破れそうで見破れない!『クララ殺し』は高レベルの論理的思考力が試される小説だと思います。
以下は主要な登場人物の元ネタ(出自)のまとめです。
ホフマン宇宙の登場人物と元ネタ
ホフマン宇宙の登場人物達と、その登場人物が登場するE・T・A・ホフマンの小説(関連作品含む)の対応表です。※ビルだけはルイス・キャロルの作品です。
登場人物 | 元ネタ |
---|---|
ビル | 不思議の国のアリス |
クララ | くるみ割り人形(バレエ) or 砂男 |
ドロッセルマイアー | くるみ割り人形とねずみの王様 |
スパランツァーニ教授 | 砂男 |
ナターナエル | 砂男 |
オリンピア | 砂男 |
コッペリウス | 砂男 |
マリー | くるみ割り人形とねずみの王様 |
ピルリパート | くるみ割り人形とねずみの王様 |
ゼルペンティーナ | 黄金の壺 |
マドモワゼル・ド・スキュデリ | マドモワゼル・ド・スキュデリ |
地球の登場人物の元ネタ
地球の登場人物達と、その登場人物が登場する小林泰三さんの小説の対応表です。複数の作品に登場する人物もいますが、表中では代表的な作品を記載。
登場人物 | 元ネタ |
---|---|
井森建 | アリス殺し |
露天くらら | (なし) |
ドロッセルマイアー | (なし) |
諸星隼人 | AΩ 超空想科学怪奇譚 |
新藤礼都 | 密室・殺人 |
岡崎徳三郎 | 密室・殺人 |
井森建が登場する小説
minor.hatenablog.com
諸星隼人が登場する小説
minor.hatenablog.com
新藤礼都と岡崎徳三郎が登場する小説
minor.hatenablog.com
minor.hatenablog.com
新藤礼都が登場するその他小説
minor.hatenablog.com
岡崎徳三郎が登場するその他小説
minor.hatenablog.com
minor.hatenablog.com