松本次郎先生の大ファンです。気がつけば漫画レビューも10記事ほど貯まりました。
松本次郎先生の漫画に共通して通じる特徴と言えば、「混沌とした世界で迷走する」ところにあると思います。荒廃したビル、混乱した人々、暴力とエロス、それらが織り交ざった世界で何かを探して迷走するような物語が多いです。
この迷走感は、きっと同じく迷走している30代の心にぐさっと刺さると思います。社会の中で自分が何のために生きているか分からなくなったのであれば、この迷走感の先に目指すべきもの答えがあるかもしれないです。
そんな迷走感のある漫画を出版順にまとめました。
ウエンディ
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2013/10/16
- メディア: Kindle版
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ネバーランドへ誘われる話です。ネバーランドといっても、そこは無秩序で色欲に満ちています。ピーターパンは銃を撃ちまくったり、ティンクはカミソリを振り回したりする、そんな世界です。
快楽に溺れた後に待っているものは何だろうか。そんなことを考えた漫画です。快楽の後には多かれ少なかれ苦痛がある、それを覚悟しなければならないです。
熱帯のシトロン
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2013/10/30
- メディア: Kindle版
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戦場カメラマンを夢見る青年が、「不思議の国のアリス」を彷彿とさせるような街に迷い込みます。その街で逃げたり足掻いたりしながら、混乱した街を救おうとします。
人は逃げたり足掻いたりしながら成長する生き物だと思いました。そう考えると、迷走は成長にとても大事な過程なのかもしれないです。
フリージア
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/02/01
- メディア: Kindle版
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敵討ち執行法が成立した社会で、殺人事件の加害者に報復する物語です。主人公は加害者を執行する代理人で、現実と妄想を行き来しながら仕事をします。
人生や仕事に明確な目的を持っている人はどれだけいるだろうか。きっと大半の人は分からなくて、分からない目的のために生きているような気がします。
未開の惑星
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2013/10/30
- メディア: Kindle版
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暴力の溢れた戦禍の街で3人の幼なじみが何かを求める物語です。1人は理想を、1人は現実を、そしてもう1人は現実と妄想の中で夢を追いかけます。
誰かが幸せになれば誰かが不幸になる、世界はそんな理不尽さでできています。けれど、その理不尽さに服従するか抗うかは自由なのだと気付いた漫画でした。
ゆれつづける
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2013/10/30
- メディア: Kindle版
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7編の短編集です。裸の天才書道家がスランプの話「ゆれつづける」や、ガスマスクを被った子供の兄妹の話「サンポーラとクレゾーラ」が収録されています。
自分の軸が分からずにゆれながら生きる、そんなテーマを感じました。軸をブレさせずに生きている人なんて希少です。軸はブレてもいいのです。
革命家の午後
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2013/10/16
- メディア: Kindle版
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5編の短編集です。女革命家と間違われるお隣さんの話「革命家の午後」や、砂漠から出たら死ぬ呪いをかけられた男の話「砂漠の魔女」が収録されています。
願うだけで夢が叶うことは稀です。実際に行動を起こさないと夢は叶わないものです。行動した結果が悲劇に繋がったとしてもその過程には価値がある、そんなことを思いました。
べっちんとまんだら
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2013/10/16
- メディア: Kindle版
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ゾンビが闊歩する河川敷で、二人の女子高生がサバゲーを行う物語です。不衛生感の漂う世界で「べっちん」と「まんだら」がゾンビを退治していきます。
二人の友情は歪んでいて、脈絡もなく怒ったり許したりします。距離感のとり方が分からず傷つけあってしまう、そんなもどかしさがたまらない漫画でした。
善良なる異端の街
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: Beaglee
- 発売日: 2016/03/25
- メディア: Kindle版
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7編の短編集です。よくオヤジ狩りにあう父の話「わたしのお父さん」や、砂漠にそびえ建つ塔を奪うために戦う少年の話「砂漠のフェーデ」が収録されています。*1*2
家族のために頑張って働いていても家族から無視されたりする、そんな報われない話が多いです。善良であっても不幸になったりする、そんな生き辛い社会です。
地獄のアリス
地獄のアリス 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/09/21
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砂漠の広がる荒廃した世界で生きる少年の物語です。人造人間のアリスを囮にして、凄腕スナイパーの少年が悪党狩りをします。
誰にも頼れなかった少年が、誰かを少しだけ頼れるようになる話のように感じました。誰かを頼る、簡単に思えるその行動はなかなかできないものです。
女子攻兵
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/09/01
- メディア: Kindle版
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女子高生の姿をした巨大なロボット「女子攻兵」に乗って戦争する話です。女子攻兵に乗り続けると精神汚染(女子高生化)が進みます。
女子高生化に抗う内容が熱いです。自分を自分だと実感すること、それは難しいもののように思います。実感を追求することの大切さに気付いた漫画です。
闘鈴
- 作者: 松本次郎
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2014/01/10
- メディア: Kindle版
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28ページの読み切り作品。妖精同士をカゴの中で戦わせる話です。妖精には不思議な魅力があります。現実より夢を見てた方がいい…そんな言葉に甘えてしまいがちですが、夢はいつかは覚めてしまうものです。そんな内容です。