マイナー・マイナー

隠れた名作の発掘が生きがい。

『地獄のアリス』人造人間と過ごす荒廃した世界、不条理すぎます


スポンサードリンク

マッドマックスのような終末感の漂う荒廃した世界って、何かそそられるものがありますよね。


松本次郎先生の漫画『地獄のアリス』はそんな世界を舞台にした漫画です。砂漠のど真ん中に「不思議の国のアリス」みたいな格好をした少女がいきなり現れる、そんな少し狂った感じに胸が熱くなります。絵になります。

少し違う世界 少し壊れた世界 少し残った人々 それから 少し壊れた人々


物語の導入部の説明です。荒廃した世界で、人々は寄り添ってコミューンを形成し、限りある資源に頼って生活しています。主人公のシュウは、どこのコミューンにも所属せずに生活していましたが、とあるきっかけでコミューンで働くことになります。


『地獄のアリス』は、今まで誰にも頼れなかった少年が、少しだけ誰かを頼れるようになる物語のように思いました。しかし、その誰かを頼るために大きな犠牲を払います。そんな救いようのない内容が印象に残りました。



だから僕は この街で一人で暮らす事に決めたんだ アリスとね


ひらひらした格好の少女「アリス」は人造人間(セルロイド)です。不条理で地獄とも思えるような世界にこういった少女が現れたら依存したくなります。


よく言われることですが、人は一人では生きていけないです。一人で生きていこうとしても、ところどころで人に頼らざるをえない状況がでてきます。例えば食料とか武器とか、なかなか一人では調達できないです。


シュウは過去のトラウマが原因で、できるだけ人には頼らないような生活をしています。しかし、コミューンで働くようになり、人との関わりが多くなります。シュウはこのままコミューンで暮らしていくことになる、そんなことを期待しましたが、そう簡単な話ではなかったです。


幼いころに刷り込まれた生活様式や思想といったものはそう簡単には変えられないです。無法者のような生活を強いられていて、急に君は誰かに頼っていいと言われても、素直に誰かを頼るようなことはできないです。


よくよく見てみると、コミューンには家族とか仲間があって、誰かに頼れるような環境も整っていたりします。けれども、過去に引きづられて素直に誰かを頼れない、そんな人も中にはいます。それが主人公のシュウでもあったりします。


この漫画の終わりは、生活様式や思想が変えられなかったことによる悲劇を迎えたように映りました。幼少期の環境は人の思想を固定的にしてしまいます。それはとても救いようのないことで、どうにもならない不条理さを感じます。そんな陰鬱な気分を残していった漫画でした。