殊能将之先生は主にミステリー小説を執筆していた作家です。文書の構成がとても練られているのが特徴で、ミスリードがとてもうまいです。そして、散りばめられたミスリードを次々と収束させる展開にとても魅力を感じます。
構成の特殊さに惚れる…そんな殊能将之先生の作品を7つ紹介します。
- ハサミ男 ~SCISSOR MAN~
- 美濃牛 ~MINOTAUR~
- 黒い仏 ~BLACK BUDDHA~
- 鏡の中は日曜日 ~Im Spiegel ist Sonntag~
- キマイラの新しい城 ~Le Nouveau Château des Chimères~
- 子どもの王様 ~A child’s king~
- 殊能将之 未発表短篇集
- まとめ
ハサミ男 ~SCISSOR MAN~
東京で女子高生二人の首にハサミを突き立てられる殺人事件が発生します。その殺人犯「ハサミ男」は次のターゲットを殺害しようと行動していましたが、そのターゲットが自分と同様の手口で殺害されているのを発見します。模倣犯を探すため、ハサミ男は調査を始めます…
第13回メフィスト賞受賞作品です。視点が切り替わりながら物語は進行するのですが、その視点から核となる真相を隠し通すトリックがすごいです。そしてミスリードが一気に解き明かされる過程に興奮しました。
美濃牛 ~MINOTAUR~
石動戯作シリーズの1作目です。岐阜県のある村にある鍾乳洞「亀恩洞(きおんどう)には、どんな病でも直す「奇跡の泉」が存在すると噂されていた。ある日、その亀恩洞のそばで首のない死体が発見されます。そして、村に伝わるわらべ唄を彷彿とさせる事件が次々と起きます…
外から見える真実と内から見える真実、その2つの違いが迷宮を作り出しているように感じました。外から内を理解するというのはたいてい困難ですが、その困難を一つずつ乗り越えていくといった面白さがありました。
黒い仏 ~BLACK BUDDHA~
石動戯作シリーズの2作目です。石動戯作はベンチャー企業の社長から宝探しの依頼を受けて福岡に行きます。一方同じ頃、福岡のあるアパートで殺人事件が起きます。石動戯作と殺人事件がつながっていき、そしてある真相にたどり着きます…
賛否両論、前代未聞、超絶技巧の問題作…というキャッチコピーをまさしく体現しています。小説にはある種の暗黙のルールみたいなものがあると思いますが、それを破るような展開が素敵でした。
鏡の中は日曜日 ~Im Spiegel ist Sonntag~
石動戯作シリーズの3作目です。本小説では表題の「鏡の中は日曜日」と「樒 / 榁」が収録されています。一つのミスリードが明らかになって落ち着いたと思ったら実はまだミスリードがある…そんな構成がすごいです。
鏡の中は日曜日
14年前に鎌倉にある法螺貝をイメージした館「梵貝荘(ぼんばいそう)」で殺人が起こります。事件は当時に決着が着いていたが、この決着に疑問を持った人物は名探偵の石動戯作に事件の再調査を依頼します…
樒 / 榁
樒 / 榁(しきみ / むろ)~Anise & Juniper~。舞台は香川県にあるとある旅館。樒と榁の2章で構成されていて、樒の章ではその旅館で密室殺人が起こり、榁の章では密室殺人から16年後に密室が起きます…
キマイラの新しい城 ~Le Nouveau Château des Chimères~
石動戯作シリーズの4作目です。千葉の山奥のファンタジーランドに再建された「シメール城」。750年前、この城の城主が密室のような状況で殺されます。そして現代、城主はシメール城を再建した社長に亡霊となって取り憑き、事件の真相を求めて石動戯作を呼びます…
現代でも密室殺人のような事件が起きるのですが、この密室の謎は750年前の事件によって与えられます。この謎がたった一言で明らかになる…その展開が一番の面白いところでした。
子どもの王様 ~A child’s king~
舞台はとある団地。そこに住んでいる小学生のショウタは、同じ団地に住んでいる友達のトモヤから、子どもを支配する「子ども王様」の話を聞きます。その後、ショウタは団地の近くで子ども王様の姿を見かけます。団地の平和を守るため、ショウタはひとり行動します…
小学生の頃を思い返すと、世界はどこかの異世界と繋がっているような感覚を感じたことがあったと思います。舞台の団地が漂わせる異世界と繋がっている感覚…それを堪能できる物語でした。