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隠れた名作の発掘が生きがい。

『ハサミ男』所々に仕込まれたミスリードが一気に解き明かされる過程に興奮です


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ハサミ男』は殊能将之氏の書くミステリー小説で、第13回メフィスト賞受賞作品です。 連続殺人犯のハサミ男を真似した殺人を巡って刑事とハサミ男が深みにはまっていきます。叙述トリックの大傑作です。


ハサミ男 (講談社文庫)

ハサミ男 (講談社文庫)


私に言えるのは、今回の事件の犯人が普通に見えるかどうかはどうでもいいのではないか、ということです。そんなことは見る人間の目によっても変わりますし、見る状況によっても変わります。


あるときはハサミ男だったり、あるときは刑事だったりと、物語の視点は切り替わりながら物語が展開されます。異なる視点で進行するのですが、それらの視点から核となる真相を隠し通す叙述トリックがすごいです。ハサミ男の視点ではハサミ男が実はハサミ男ではないとか、視点間で犯行日時がズレて進行しているとか推測しながら読んでいましたが、その予想はことごとく外れました。


あと、最後の展開が素敵です。所々に仕込まれたミスリードが、後半になって一気に解き明かされて収束へと向かう過程に興奮しました。そして、真実だと思い込んだことを払拭しきれず、真実ではないことを真実と思って完結するようなオチにハサミ男のテーマみたいなものを感じました。目にうつるものの確からしさに依存して生活していることを再認識させられるような作品です。


この作品って映画化もされているけれど、この内容をどうやって映像化したんだろう??